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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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おべんともって【遙か4/葦原家】

葦原家祭参加作品
現代来てすぐ位のハッピーマンデー前日の葦原家
ほのぼのした感じの「家族」♪


おべんともって




「明日は、皆でお弁当持って出掛けましょうか。」
 
 突然、風早が言ったのは、夕食の片づけを始めた時だった。
 
「は?」
「ピクニック!?」
 
 那岐が、部屋へ戻ろうとした足を止めて…
 千尋が、食器を棚にしまおうとした手を止めて…
  二人同時に、違う雰囲気を滲ませながら、提案した風早を見た。
 
「折角、月曜日がお休みなんですから、たまには外でお弁当を食べるのもいいでしょう?」

 にこにこと微笑みながら、冷蔵庫から取り出した弁当の材料をテーブルに並べ始める風早。

「休みなら寝てたいんだけど?だいたい……」
「ね、ね、どこまで行くの?ピクニック。」

 拒否を訴える那岐の言葉を遮って、食器を片付けた千尋が風早の方へ身を乗り出す。
 
「どこまで行きましょうか?」

 千尋に…ではなく、風早が視線を向けたのは那岐。

「あのさ、まだ行くって言ってないんだけど?僕は。」
「え?行かないの?那岐。」

 そして、哀しそうな千尋の視線が那岐を刺した。
 
「……………行かないとも言ってないだろ……………」
 
 思わず吹き出した風早を睨みながら、那岐はキッチンの椅子へと腰掛ける。

「やった!じゃあ、私、シートとか出してくるね!」

 小躍りせんばかりに満面の笑みを浮かべた千尋が、軽い足取りでキッチンを飛び出してゆく。
  その後ろ姿を見送り、下準備をしている風早をテーブルに頬杖をついて眺めながら、那岐が面倒臭げに問い掛けた。
 
「何で、いきなりピクニックなんだ?」
「千尋が……」

 呟くように、風早が言葉を紡ぐ。

「遠足や運動会で、皆でお弁当を食べるのが楽しいと言っていたでしょう?」
「ああ…」
 
 そういえば、と思い出す。
 
『外で、皆で一緒に食べるのって、楽しいね。』
 
 そんな風に言っていた千尋の言葉が甦る。
 あの地ではあり得なかったことだ。
 
 ……たとえ、あの頃の記憶が失われていたとしても……
 
「それに、こちらでは、春や秋には家族でお弁当を持ってピクニックに行くのが当たり前らしいですから。」
 
 にっこりと浮かべられた笑顔。
 那岐は大袈裟に溜息をついて見せた。
 
「じゃあ、そこの公園……じゃダメだね。」
「藤原宮跡まで行きますか?」
 
 ぱたぱた、と聞こえてきたのは軽い足音。
 
「ああ、我が家の姫君が戻ってきましたよ。」

 くすくすと笑う風早。

「千尋。走ると転ぶ……」

 声を掛けた那岐の言葉が終わる前に、惨事を思わせる音が響く。
 
「…………」
 
 思わず顔を見合わせて……
 もうすぐ、半べそ顔で戻ってくるであろう千尋を想像しながら、揃って苦笑を浮かべた。



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