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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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WITH 7【最遊記 三空】

【最遊記/三空】
過去に友人の三空本へ寄稿した中編作品です



WITH 7



 部屋に差し込んでくる光が、月と星の微かな光から朝の日の光に変わっていた。
 ふと目を覚まして、三蔵はベッドに上体を起こした。
 ……静かな目覚め。
 静かな……部屋の中。
 ――いや。
 微かに聞こえてきた息遣いに、ふと視線を移すと、茶色い髪が視界に入った。
 それが誰のものである。とか、そこに誰がいる。とかそういったことを思う前に、心のどこかにどう名付けてよいか分からない仄かなぬくもりを感じる。
「そうか……」
 口に出して呟くことで、夢と現の境にあった意識が現へと浮上してきた。
 そして気付く、夢を見ていたことに。
 旧い出来事の夢を……
 それを思い出させるようなことを言って八戒が部屋を出て行った後、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
 だから、いつ戻ってきたのかすら分からないが……悟空は椅子に座り、三蔵の居るベッドにうつ伏せて眠っていた。
 出逢った頃のそれと変わらぬ、あどけない安らかな寝顔。
 すぐ横にベッドがあるのだから、そこで寝ればよいものを……と思いつつ、三蔵は静かに上体を起こして手を伸ばした。
 優しく髪に触れる。
 触り慣れた、髪の感触。
 そっと頭を撫でる。
 優しく不器用に撫でているうちに、
「う………ん」
 小さく呻き、悟空が身じろぎした。
 ぼうっと目をこすりながら身を起こす。
 一度大きくあくびをして、悟空は窓から差し込む日差しに眩しげに目を細めた。
 そして、はた……と動きを止める。
 続いていきなり、がばっ!と立ち上がり、
「三蔵っ!」
 声を上げた。
「朝っぱらからやかましい!バカ猿。」
 頭にハリセンが振り下ろされて、同時にいつもと変わらぬ声がした。
「いってぇー!」
 悲鳴を上げ、頭を抱える。
「何すんだよ!……って……三蔵!」
 抗議の声を上げて、はた……と御供は動きを止めた。
 立ち上がり頭を抱えた姿勢のまま、三蔵の顔を凝視する。
「なんだ。」
 手にしたハリセンで自分の肩を、とんとんと軽く叩きつつ、三蔵が視線を向けてくる。
「……三蔵、起き上がっても大丈夫なのか?熱、下がったのか?」
 身を乗り出すようにして手を伸ばす。
「うん。もう大丈夫だな。」
 額に触れた手に伝わってくる三蔵の体温が、いつものそれと同じなのを確認して、悟空は笑顔を浮かべた。
「フン」
 面倒臭さそうに、額に触れている悟空の手を払い、
「いつかみたいに、てめえが迷子になって俺を呼ばなかったからな。」
 だからゆっくり寝られた。と、横目で悟空を身ながら、三蔵が言う。
 一瞬きょとん、とした悟空が、記憶の中から該当する出来事を掘り起こす。
「そんな前のこと持ち出すなよなっ!」
 食ってかかる悟空に、微かに唇の端を笑みの形に歪め、三蔵は手を伸ばした。
「それに、あん時は三蔵だって……え?」
 悟空が、抗議の言葉を途切れさせた。
 伸ばされた三蔵の手がくしゃり、と悟空の髪を撫でる。
「三蔵?」
 訳が分からず問いかけてくる悟空には答えず、更に、くしゃくしゃと髪を撫でる。
 ……相変わらずの無愛想な表情のままで……

 長いとも短いとも思える静かな時間が流れた。

 ふと扉の向こうから話し声が聞こえてくるのに気付いて、すっ……と、三蔵は手を離した。
「三蔵?」
 再び問い掛けてくる悟空に、
「うるせえ」
 言い捨てて三蔵はベッドを降りた。
 もうじき、話し声の主である隣室の二人がこの部屋の扉をノックするだろう。
「朝飯食ったら出発するぞ。」
 そう告げた三蔵に、悟空が歓声を上げた。
「オレ、もう腹減って腹減って……」
 これまで静かにしていた分の反動でもきたのか……と思うくらいの勢いで、嬉しそうに食べ物の名前をあげ連ね始める悟空に、三蔵は片方の眉を、ピクン、とはねさせた。

「やかましいっ!」
 声とともに悟空の頭へと振り下ろされたハリセンが、景気のいい音を響かせた。

 

 

 
END




ゲストで書いたのいつ頃だったかしら?などと思いながらアナログ原稿からPCへ入力しなおす日々……漸く完成しました。
この頃は三空やら望普やらのカップリングとは言いがたい、ほのぼの書いてました。
ありがちな風邪ネタですが、気付いたら悟浄や八戒も出てきて長々と……
ゲスト作品にしては長めの話になってしまったんですよ
あと何本か短編があるのですが、恥ずかしくないものだけUPしようかなと思います。三空


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