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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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近くに感じてる…でも、とても遠い存在【スレイヤーズ/ルナゼロ】

ルナ×ゼロス(ゼロルナではない)です。布教中デス。
再録本に収録できなかった新作短編。
甘々ほのぼのした感じですが…ルナ姉ちゃんが別人っぽくなってるっぽい

近くに感じてる…でも、とても遠い存在

 

  小鳥の囀りが途絶えた。

 ルナは、口元に小さな笑みを浮かべてすぐ傍らの木を見上げ、そこにいるであろう存在へと声を掛ける。

 

 

「折角の長閑な昼下がりを邪魔しないで欲しいわね。」

「心外ですねぇ~僕も長閑な昼下がりを堪能していたんですよ。」

 飄々とした声。

 ルナは振り返ることもせず、くすくすと笑った。

「似合わない言葉、使わないで。」

「本当に失礼な人ですね。」

 ルナの言葉に気を悪くした様子もなく、突然姿を現した黒尽くめの神官が溜息をついた。

 ゼロスの言葉に、漸く振り返ったルナは不敵な笑みを浮かべて言葉を返す。

「魔族のあんたに言われたくない言葉ね。どうでもいいけど。」

「………暇、なんですね…ルナさん。」 

 

 にっこりと、ルナが満面の笑みを浮かべた。

 それは、肯定の意味を含んだものなのだろうけれど……

 一瞬、ゼロスの背筋を駆け抜ける何か。

 危険だ…と誰しもが……彼女をよく知る誰もが感じる警鐘。

「そういうわけだから、今日一日つきあってもらうわね。」

「は!?」

 いきなりのお誘い……もとい強要に、ゼロスは素っ頓狂な声を上げてしまう。

 でも……

 

「え~っと、僕は、何をすればいいんでしょうか……」

 従うしかないのは、それほど長いとはいえぬ…出会ってからの期間に本能的に学習した保身ゆえ…だろう。

 ここで否とでも言おうものなら……彼女は、確実に、全力で自分を滅ぼしに掛かる。

 言われたことはないが、それだけは何故か確信していた。

 

「別に、あんたみたいに『ヒミツ』とか言わないから安心しなさい。」

「はあ…」

「当然だけど、取って食うつもりもないしね。食中りしそうだから。」

「それで……」

「簡単な話よ。」

 微笑んで、ルナは言った。

「一日、あたしと買い物したり、おしゃべりしたり、お茶したり、散歩したり……」

「付き人でもすればいいんですか?」

「ちがうわよ。」

 困ったように頭を掻きつつ問うゼロスへと、ルナは少し頬を膨らませながら返した。

「デートしましょって、言ってるのよ。」

 いきなり手を取られよろめいたゼロスを引っぱって、ルナが駆け出す。

「えっ!あっ!ちょっと待ってくださいっ!!」

 突然のことに、さすがに当惑してなすがままだ。

 どうしたものかとルナを見れば、楽しげな表情。

 

 ――しかたないですねぇ……

 

 あまり、正の感情に触れるのは喜ばしいことではない。

 けれど……

 街の同年代の娘たちと同じような表情をしているルナを見るのは、あまりにも新鮮で……もっと見てみたいと思ってしまった。

 

 

 ――たまには、いいですかね。

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