近くに感じてる…でも、とても遠い存在【スレイヤーズ/ルナゼロ】 2008年07月22日 スレイヤーズ/騎士と神官 0 ルナ×ゼロス(ゼロルナではない)です。布教中デス。 再録本に収録できなかった新作短編。 甘々ほのぼのした感じですが…ルナ姉ちゃんが別人っぽくなってるっぽい 近くに感じてる…でも、とても遠い存在 小鳥の囀りが途絶えた。 ルナは、口元に小さな笑みを浮かべてすぐ傍らの木を見上げ、そこにいるであろう存在へと声を掛ける。 「折角の長閑な昼下がりを邪魔しないで欲しいわね。」 「心外ですねぇ~僕も長閑な昼下がりを堪能していたんですよ。」 飄々とした声。 ルナは振り返ることもせず、くすくすと笑った。 「似合わない言葉、使わないで。」 「本当に失礼な人ですね。」 ルナの言葉に気を悪くした様子もなく、突然姿を現した黒尽くめの神官が溜息をついた。 ゼロスの言葉に、漸く振り返ったルナは不敵な笑みを浮かべて言葉を返す。 「魔族のあんたに言われたくない言葉ね。どうでもいいけど。」 「………暇、なんですね…ルナさん。」 にっこりと、ルナが満面の笑みを浮かべた。 それは、肯定の意味を含んだものなのだろうけれど…… 一瞬、ゼロスの背筋を駆け抜ける何か。 危険だ…と誰しもが……彼女をよく知る誰もが感じる警鐘。 「そういうわけだから、今日一日つきあってもらうわね。」 「は!?」 いきなりのお誘い……もとい強要に、ゼロスは素っ頓狂な声を上げてしまう。 でも…… 「え~っと、僕は、何をすればいいんでしょうか……」 従うしかないのは、それほど長いとはいえぬ…出会ってからの期間に本能的に学習した保身ゆえ…だろう。 ここで否とでも言おうものなら……彼女は、確実に、全力で自分を滅ぼしに掛かる。 言われたことはないが、それだけは何故か確信していた。 「別に、あんたみたいに『ヒミツ』とか言わないから安心しなさい。」 「はあ…」 「当然だけど、取って食うつもりもないしね。食中りしそうだから。」 「それで……」 「簡単な話よ。」 微笑んで、ルナは言った。 「一日、あたしと買い物したり、おしゃべりしたり、お茶したり、散歩したり……」 「付き人でもすればいいんですか?」 「ちがうわよ。」 困ったように頭を掻きつつ問うゼロスへと、ルナは少し頬を膨らませながら返した。 「デートしましょって、言ってるのよ。」 いきなり手を取られよろめいたゼロスを引っぱって、ルナが駆け出す。 「えっ!あっ!ちょっと待ってくださいっ!!」 突然のことに、さすがに当惑してなすがままだ。 どうしたものかとルナを見れば、楽しげな表情。 ――しかたないですねぇ…… あまり、正の感情に触れるのは喜ばしいことではない。 けれど…… 街の同年代の娘たちと同じような表情をしているルナを見るのは、あまりにも新鮮で……もっと見てみたいと思ってしまった。 ――たまには、いいですかね。 PR