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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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ベゼルドへの道行【スレイヤーズ/ガウリナ】

原作の展開上、本として発表できなかったお話。
なので、少々、設定無視してます。   そこそこ甘め。

ベゼルドへの道行


 

「まったくもう!

 あんたが今持ってるのは光の剣じゃないのよ!」

 

 治療をかけながら、あたしはガウリイに向かって言った。

 

「……忘れてた」

 頭をかきながらガウリイは笑う。

 

「笑い事じゃない!

 ……ったく…、よく生きてたもんよ。」

 

 炎の矢を切ろうとして、ガウリイは普通の剣の柄だけを振り回したのだ。

 ……危なっかしくて見てらんないわよ……

 

 そんなあたしの気も知らず、ガウリイは、

「たいしたもんだ。

 これも、いつもお前さんに呪文で吹き飛ばされて慣れたからかな。」

 

 などと言って、また笑っている。

「笑い事じゃないって言ってるでしょっ!……はいっ、おわり」

 おもいっきし背中を叩いて、あたしは言った。

 

「おっ、さんきゅー。リナ」

 あーあ、日が傾きかけてるわ。

「あんたのせいで今夜は野宿かもね……」

 ため息ついて、あたしは呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか見つからないものだな……魔法剣ってやつは」

 

 たき火に並んで当たりながら、ガウリイが呟く。

 結局野宿になっちゃった。

 

「ま…ね。そんなに簡単に見つかったら、誰も苦労しないわよ。」

 ごろん、と地面に寝転がってあたしは言った。

 

「探せばあるもんだ。って言ったのお前だろ?」

 言って、ガウリイはあたしのすぐ横へと寄ってくる。

 金色の髪が、彼の動きに合わせて、あたしのすぐ目の前で揺れる。

 

「……覚えてたんだ。めずらしー」

 真顔で言ったあたしの言葉に、

「……おまえな……」

 ガウリイが苦笑した。

 

「でもね、絶対、見つけてあげる。いつまでかかるかは分かんないけどさ、絶対見つかるわよ。あたしが保証するわ。」

 あたしはにっこりと微笑んで言った。

「早く見つかるといいな。」

 

 

 どきんっ

 

 

  『一緒に旅する理由はなくなるわけですね』

 

 

 なぜだかシルフィールの言葉を思い出す。

 

 剣が見つかると、あたしがガウリイと一緒に旅する理由は、また、なくなる。

 

 ……あれ……

 

 なんだろ。この気分。……すごく……苦しい……。

 

 

 

「リナ?」

 

 突然黙り込んだあたしを不審に思ったのか、ガウリイが呼びかけてくる。

「どうしたんだ?」

 

「ううん。なんでもない。」

 あたしは首を横に振って、あたしの頬をくすぐる金色の髪に指を触れさせた。

 

 きれいな髪……

 男のくせに……

 

「あんたさあ。いつまであたしの保護者でいる気?」

 

 ガウリイの髪は掴んだままで、あたしは起き上がって問いかけた。

 

「そーだなー。リナが無茶をしなくなるまで。」

 少し考えて、すぐにガウリイは答えた。

 

「……あたしの無茶は直んないかもよ。」

 いたずらっぽく笑ってあたしは言う。

 

「うーん。それは言えてるな。」

 くしゃっ、とあたしの髪をかき回して、ガウリイは言った。

 

 どきんっ

 

 ガウリイの笑顔はあたしを惹きつける。

 

「もー!髪いじんないでよーっ!」

 ぷーっ、とふくれてあたしは言う。

 

「お前の方が先に、ひとの髪いじってるくせに」

 あたしの頭から手をどけないで、ガウリイは言った。

 

「あたしはいいの!」

「ふーん」

 

 さら……

 

 え?

 

 ガウリイの指が、ゆっくりとあたしの髪を梳く。

 なんだか……すごく心地いい。

 

「ねえ……剣が見つかったら………ガウリイはどうするの?」

 あたしは、思い切って聞いてみた。

 

「うーん。どうするんだ?」

 ガウリイは、あたしを見てそう問い返した。

 

 ………をい。

 

「だからっ!何であたしに聞くのよっ!

 あたしはっ!あんたがどうするか聞いてんのよ!」

 あたしは思わず、彼の胸倉を掴みあげて怒鳴った。

 

「いや……だって……」

「だって……じゃないっ!

 『剣が見つかるまでは一緒だな』って言ったのあんたでしょ!」

 

 なぜだか……涙が込み上げてきて、あたしはガウリイのシャツをはなして、彼から顔を背けた。

 

「そんなこと言ったっけ?」

 

 な……

 

「言ったわよっ!」

 叫ぶあたし。

 

 やだ……涙がとまんない……

 

「…………リナ」

 呼びかけ。そして……

 

「え?うわきゃっ!」

 突然、後ろにひっくりかえりそうになる。

 

 とん……

 

 ……え?

 

 ふわ……

 

 背中に感じた温もりに、あたしは何が起こったのかに気づいた。

 

「ちょっと!」

「馬鹿だな……泣くことなんてないだろ?」

 声を上げるあたしの耳元で、ガウリイが囁く。

 

「オレが、リナから離れる訳、ないだろ?」

 

 どういうこと……?

 

 ぐいっ

 

 へ?

 

 くるり、っと、あたしを自分の方に向かせて、ガウリイは微笑んだ。

 

「リナ……」

 小さく囁かれる声。

 

 ゆっくりと、ガウリイの顔が近づいて……

 

 かあぁぁっ!

 

 顔が紅潮するのが自分でも分かった。

 彼は、あたしの頬を伝う涙を唇で拭ったのだ。

 

「なっ!なにすんの……」

 あたしが文句を言うのを遮って、

 

「オレは、お前さんの無茶が直るまでずっと保護者でいるんだ。

 ……無茶は直らないんだろ?リナ」

 ガウリイが笑って言った。

 

「ばか……」

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