幼馴染・冬の巻【遙か3/幼馴染組】 2009年11月04日 遙かなる時空の中で3 0 捏造過去 小学生な幼馴染の話。 大雪の降った日、望美は熱を出して寝込んでいて… 幼馴染・冬の巻 あつい… アツイ… 熱い…… 意識が朦朧としていた。 なんだか、ふわふわと浮いたような感じがする。 ひんやりとした、母の手が心地よかった。 「雪だ……」 望美は、ぽつりと呟いた。 昨夜から出た熱は、どんどん上がって行って……朝には40度近くにまでなった。 体温計の数字を見た途端、一気に体が重くなった。 今日は休まないとね…と言う母の言葉に、望美は、はぁ…と息を吐いた。 「すごく降ってるわね。」 母の優しい声。 望美は小さく頷いた。 暖房の効いた車の中だから寒さは分からないけれど…昨夜から降っていた雪は、結構積もってしまっていた。 窓の外で少し吹雪いているのを見ながら、望美は少し泣きそうになった。 「どうしたの?」 「遊びたかったのに……」 拗ねたように呟いた望美に、母は苦笑を浮かべたのだった。 ご飯を食べる元気はなかった。 薬を飲んで、なんだか脳みそまで茹ってしまいそうな熱の高さに、望美は布団へと潜り込む。 「学校に連絡したら、今日は大雪警報でお休みだって。」 「………」 よかったわね、欠席にならなくて……なんて言われるけれど、なんだか損をした気分だった。 熱なんか出さなければ、たくさん積もった雪で遊べたのに。 ――いいなぁ…… きっと学校が休みになって、めいっぱい遊んでいるのであろう隣の幼馴染達が羨ましかった。 チラリと窓の方へ視線を向けると、そこから見える屋根は全部まっ白。 溜息を吐き、頬を膨らませて…望美は壁の方に向かって寝返りをうった。 コンコンと、リビングの窓を叩く小さな音がして、望美の母はそちらを振り返った。 「あら?将臣くん、譲くん。どうしたの?」 その小さなお客様たちは、隣に住む望美の幼馴染二人。 外で遊んでいたのだろう、マフラーやセーターには雪がくっついていて…頬は寒さでピンク色になっていた。 「おばさん、これ!」 「雪を入れた雪まくら!」 窓を開けると、二人は雪の冷たさで手を真っ赤にして、ニッコリ笑いながらそれを差し出した。 「え?」 目を瞬かせて、二人の顔を見比べる。 「望美、熱出してんだろ?」 「せっかく雪が積もったのに遊べないんでしょ?」 だから代わりに、水枕の中へ雪を詰めたのだと、二人は誇らしげにそれを差し出す。 先年他界した隣のお祖母さんが願ったように、二人は優しく強い子に育っていた。 そう……スミレの願った通り、望美を大切にしてくれる……優しい子に……… 「あらまあ。ありがとう。」 二人を暖かいリビングへと招き入れ、受け取った少し重いそれを望美へと持っていく。 せっかくの好意を、この温かい想いと一緒に早く望美に届けてやりたかった。 「ん……?」 不意に感じた違和感に、望美はふと目を開いた。 「あら、起こしちゃったわね」 「おかあ…さん?」 薬の時間ではないはずだ… 母の声がした方へ頭を動かすと、頭の下に不思議な感触。 ――何だろう…… 水枕を変えてくれたのか…とも思ったが、水のたぷたぷという感触や、氷の入ったごろごろという感触ではない。 この感触は初めてだ。 ぼぅっとした思考のまま、望美は首を傾げる。 「将臣くんと譲くんがね、雪まくら持ってきてくれたのよ。今日限定だって。」 不思議そうな顔をしていたのに気付いたのだろう。 母は、望美の疑問への答えを伝えた。 「ゆ…き?」 ――ゆき…まくら? 初めて聞く言葉…だと思う。 シャクシャク…と、知らない感触が、頭を動かす度にする。 「外、たくさんの雪が積もっているでしょう?それを入れてきてくれたのよ。」 「すごい…」 嬉しくて、望美はニッコリ笑った。 それは、とても特別なことのような気がした。 「ごちそうさまでした。」 「今度は雪だるま持ってくるから!」 ホットミルクをご馳走になって、体の暖まった兄弟はまた駆け出していく。 「いっぱい作ってくるから、あとで見せてあげてね!」 「譲、雪だるま冷凍庫にも入れとこうぜ。」 「兄さん!入れ過ぎたらまた怒られる……」 「大丈夫だって!」 それは、幼い日の思い出。 三人だけの……大切な思い出。 どれだけ日々が過ぎようとも… 三人の距離が変わろうとも… PR