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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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幸福な相談事【遙か3/望美&朔】

迷宮愛蔵版(弁望前提)
迷宮愛蔵版の弁慶クリスマス後日談ネタバレ
贈り物を朔に相談する望美との、二人のほのぼの会話

幸福な相談事



「朔ぅ~~!!」

 顔を見るなり縋りついてきた親友に、朔は、脳裏に様々な原因の憶測をめぐらせながら…兎に角落ち着かせようと彼女の肩へと手を載せた。





 事の始まりはクリスマスイヴ。

 あの迷宮から帰って来て皆で盛り上がった宴。
 その片付けの後、望美が「彼」と二人で姿を消したことは知っていた。
 どんな時間を過ごしたのか…なんてことを聞くなんて、そんな野暮なことはしたくない。

 だから……



「まったく……しまりのない顔だこと……」

 くすくすと笑いながら、朔は、緩みっぱなしの顔で花を見つめる望美へと、呆れたように言った。

「だって~…」

 急に部屋へ呼ばれ縋りつかれた時には、何があったのかと心配になったというのに…
 その親友は、贈られた花束のお返しをしたいから相談に乗って欲しいのだと、とても真剣な瞳を向けてきたのだった。

「はいはい。」

 ――分からないでもないけれど…ね……

 想い人との二人きりの時間だけでも幸福だというのに、思いもよらぬ贈り物を貰ったのだ……それ以上に嬉しいことがあるだろうか……

「絶対、弁慶さんのこと驚かせたいんだ。」

 気合充分の表情。
 朔は苦笑を浮かべた。
 望美の意気込みも分かるけれど、弁慶が驚くところなど想像できない。
 ……なんてことを言ったら、本人に失礼だろうか……

 ――そんなことは、ないわね。

 そんな風に思うのは、本心の読めない弁慶の顔を思い出したからだ。
 けれど、望美にそんなこと言えない。
 頼ってくれたのだから、少しでも役に立ちたいと思った。

「けれど…何を贈れば弁慶殿は驚いてくれるのかしら?」
「……それが分からないから、相談に乗って欲しかったの。」

 困ったように、望美は朔を見つめる。
 はぁ…と、朔は溜息を吐いた。

「この世界では、『まふらあ』とか『てぶくろ』というものを編んで『くりすますぷれぜんと』にすると、聞いたのだけれど…?」
「それも考えたんだけど…」

 言い掛けて、望美は肩を落とした。

「どうしたの?」
「それじゃあ、すぐに渡せないなぁ…って。」

 そんなものこれまで作ったことのない望美には、今日明日などという短時間で作るなんてことはまず無理だ。



「贈り物を選ぶ幸福な時間……って…………幸福っていうより凄く大変な時間だって気がするよ……」

 望美がぽつりと呟いた言葉に、朔は首を傾げた。
 こっそりと親友の顔を見てみれば、花を見つめながら頬を膨らませている。
 少し考え込んで、ふと思い当る。

「贈り物を受け取ってもらった時のことを考えたら、幸せな気持ちにならない?」
「え?」

 くすくすと笑いながら言う朔の言葉に、望美が目を瞬かせた。

「受け取ってもらった時の……?」
「あなたが選んだものに、喜んでもらえた時のことを想像してごらんなさい。」
「喜んでもらえた時……」

 呟いて、望美は何やら考え込み始める。
 暫しの沈黙。

 そして…………



「また、そんなしまりのない顔をして……」

 笑いながらの朔の言葉。
 望美は、はっと我に返って顔を赤く染めた。

「朔の意地悪。」
「はいはい。」

 唇を尖らせて拗ねてしまった望美へと優しげなまなざしを向けて、朔は微笑む。

「弁慶殿を驚かせて、喜ばせるための贈り物……考えるんでしょう?」



 決まるまで、ずいぶんと時間がかかってしまいそうだ……と思いながら、親友の幸せそうな顔と窓際で揺れる花とを、朔は見比べた。
 どうか、彼女がずっと幸せに笑っていてほしいと願いながら。

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