幸福な相談事【遙か3/望美&朔】 2009年11月26日 遙かなる時空の中で3 0 迷宮愛蔵版(弁望前提) 迷宮愛蔵版の弁慶クリスマス後日談ネタバレ 贈り物を朔に相談する望美との、二人のほのぼの会話 幸福な相談事 「朔ぅ~~!!」 顔を見るなり縋りついてきた親友に、朔は、脳裏に様々な原因の憶測をめぐらせながら…兎に角落ち着かせようと彼女の肩へと手を載せた。 事の始まりはクリスマスイヴ。 あの迷宮から帰って来て皆で盛り上がった宴。 その片付けの後、望美が「彼」と二人で姿を消したことは知っていた。 どんな時間を過ごしたのか…なんてことを聞くなんて、そんな野暮なことはしたくない。 だから…… 「まったく……しまりのない顔だこと……」 くすくすと笑いながら、朔は、緩みっぱなしの顔で花を見つめる望美へと、呆れたように言った。 「だって~…」 急に部屋へ呼ばれ縋りつかれた時には、何があったのかと心配になったというのに… その親友は、贈られた花束のお返しをしたいから相談に乗って欲しいのだと、とても真剣な瞳を向けてきたのだった。 「はいはい。」 ――分からないでもないけれど…ね…… 想い人との二人きりの時間だけでも幸福だというのに、思いもよらぬ贈り物を貰ったのだ……それ以上に嬉しいことがあるだろうか…… 「絶対、弁慶さんのこと驚かせたいんだ。」 気合充分の表情。 朔は苦笑を浮かべた。 望美の意気込みも分かるけれど、弁慶が驚くところなど想像できない。 ……なんてことを言ったら、本人に失礼だろうか…… ――そんなことは、ないわね。 そんな風に思うのは、本心の読めない弁慶の顔を思い出したからだ。 けれど、望美にそんなこと言えない。 頼ってくれたのだから、少しでも役に立ちたいと思った。 「けれど…何を贈れば弁慶殿は驚いてくれるのかしら?」 「……それが分からないから、相談に乗って欲しかったの。」 困ったように、望美は朔を見つめる。 はぁ…と、朔は溜息を吐いた。 「この世界では、『まふらあ』とか『てぶくろ』というものを編んで『くりすますぷれぜんと』にすると、聞いたのだけれど…?」 「それも考えたんだけど…」 言い掛けて、望美は肩を落とした。 「どうしたの?」 「それじゃあ、すぐに渡せないなぁ…って。」 そんなものこれまで作ったことのない望美には、今日明日などという短時間で作るなんてことはまず無理だ。 「贈り物を選ぶ幸福な時間……って…………幸福っていうより凄く大変な時間だって気がするよ……」 望美がぽつりと呟いた言葉に、朔は首を傾げた。 こっそりと親友の顔を見てみれば、花を見つめながら頬を膨らませている。 少し考え込んで、ふと思い当る。 「贈り物を受け取ってもらった時のことを考えたら、幸せな気持ちにならない?」 「え?」 くすくすと笑いながら言う朔の言葉に、望美が目を瞬かせた。 「受け取ってもらった時の……?」 「あなたが選んだものに、喜んでもらえた時のことを想像してごらんなさい。」 「喜んでもらえた時……」 呟いて、望美は何やら考え込み始める。 暫しの沈黙。 そして………… 「また、そんなしまりのない顔をして……」 笑いながらの朔の言葉。 望美は、はっと我に返って顔を赤く染めた。 「朔の意地悪。」 「はいはい。」 唇を尖らせて拗ねてしまった望美へと優しげなまなざしを向けて、朔は微笑む。 「弁慶殿を驚かせて、喜ばせるための贈り物……考えるんでしょう?」 決まるまで、ずいぶんと時間がかかってしまいそうだ……と思いながら、親友の幸せそうな顔と窓際で揺れる花とを、朔は見比べた。 どうか、彼女がずっと幸せに笑っていてほしいと願いながら。 PR