花色衣-ハナゴロモ-【遙か3/弁望】 2009年02月12日 遙かなる時空の中で3 0 2009年BD ED後 薬師夫婦 弁慶さんお誕生日記念の小話です 神子視点のほのぼの。 花色衣-ハナゴロモ- 「おはようございます。弁慶さん。」 今日は特別な日。 だから、ちょっとだけ頑張って早く起きた。 だから、ちょっと前からこっそりと準備していた。 「おはようございます。今日は早いですね。」 この微笑みが大好き。 お日様に輝く髪が好き。 優しい琥珀色の瞳が好き。 「えへへ」 いつも起こされてばかりだけど… 今日ばかりは、そうはいかない。 「なんだか楽しそうですね。」 何かいいことがありましたか? 問われたって答えない。 だって…… 「朝ごはん、出来てますよ。」 言って手伝う着替え。 後ろから、その肩へと掛ける衣。 気づくかな…なんて思いながら、 顔が見えないのをいいことにニンマリする。 「おや?」 ほら。 ちょっと嬉しくて。 ちょっと悔しい。 「どうしたんですか、これ?」 きっと答えを知ってるんだろう。 でも、穏やかに微笑みながら振り返って… 瞳が捕らえられる。 「だって、今日は弁慶さんのお誕生日でしょう?」 にっこりと微笑んで告げれば、ほら。 今年も、そんなに驚いた顔をしてくれる。 「ああ…そうでしたね……」 生まれた日を祝う行事。 この世界では馴染みのない習慣だけど… 私たちの間では毎年の恒例行事。 「ちゃんと、縫えてるでしょ?頑張ったんです。」 こっそりと。 気づかれないように。 内緒で。 「はい。とても着心地が良いですよ。」 指を何度も針で刺した。 自分の着物を一緒に縫い付けてしまったりもした。 うまくできなくて、くじけそうにもなった。 でも…… 「よかった……」 この世界に残って。 この人の元に残って。 季節はいくつか廻って… 「弁慶さん。お誕生日おめでとう。」 「ありがとう…望美さん。」 出会えてうれしい。 一緒にいられてうれしい。 生まれてきてくれて…本当にうれしい。 だから…… 「あのね。」 「なんですか?」 そっと自分から口づける。 じっと瞳を覗きこんで、一番伝えたい言葉を伝える。 「生まれてきてくれて、ありがとう。私と一緒に生きてくれて、ありがとう。」 PR