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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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花色衣-ハナゴロモ-【遙か3/弁望】

2009年BD ED後 薬師夫婦
弁慶さんお誕生日記念の小話です
神子視点のほのぼの。


花色衣-ハナゴロモ-



「おはようございます。弁慶さん。」
 
 今日は特別な日。
 だから、ちょっとだけ頑張って早く起きた。
 だから、ちょっと前からこっそりと準備していた。
 
「おはようございます。今日は早いですね。」
 
 この微笑みが大好き。
 お日様に輝く髪が好き。
 優しい琥珀色の瞳が好き。
 
「えへへ」
 
 いつも起こされてばかりだけど…
 今日ばかりは、そうはいかない。
 
「なんだか楽しそうですね。」
 
 何かいいことがありましたか?
 問われたって答えない。
 だって……
 
「朝ごはん、出来てますよ。」
 
 言って手伝う着替え。
 後ろから、その肩へと掛ける衣。
 気づくかな…なんて思いながら、
顔が見えないのをいいことにニンマリする。
 
「おや?」
 
 ほら。
 ちょっと嬉しくて。
 ちょっと悔しい。
 
「どうしたんですか、これ?」
 
 きっと答えを知ってるんだろう。
 でも、穏やかに微笑みながら振り返って…
 瞳が捕らえられる。
 
「だって、今日は弁慶さんのお誕生日でしょう?」
 
 にっこりと微笑んで告げれば、ほら。
 今年も、そんなに驚いた顔をしてくれる。
 
「ああ…そうでしたね……」
 
 生まれた日を祝う行事。
 この世界では馴染みのない習慣だけど…
 私たちの間では毎年の恒例行事。
 
「ちゃんと、縫えてるでしょ?頑張ったんです。」
 
 こっそりと。
 気づかれないように。
 内緒で。
 
「はい。とても着心地が良いですよ。」
 
 指を何度も針で刺した。
 自分の着物を一緒に縫い付けてしまったりもした。
 うまくできなくて、くじけそうにもなった。
 でも……
 
「よかった……」
 
 この世界に残って。
 この人の元に残って。
 季節はいくつか廻って…
 
「弁慶さん。お誕生日おめでとう。」
「ありがとう…望美さん。」
 
 
 
 出会えてうれしい。
 一緒にいられてうれしい。
 生まれてきてくれて…本当にうれしい。
 
 だから……
 
「あのね。」
「なんですか?」
 
 そっと自分から口づける。
 じっと瞳を覗きこんで、一番伝えたい言葉を伝える。
 
「生まれてきてくれて、ありがとう。私と一緒に生きてくれて、ありがとう。」
 
 

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