エンゼル・スイートタイム【乱夢主】 2020年11月22日 文豪ストレイドッグス 0 某お菓子メーカーとのコラボでもらえたクリアファイルの絵柄からの妄想のテキスト版。 pixivには過去にその背景の洋館へ行った際に取った写真を使った画像化SSを置いています。 ※名前あり創作女夢主一人称 エンゼル・スイートタイム 目の前の光景に大きく溜め息を吐いた。 「あー、これもう中身ないや」 「乱歩さん、じゃあ、これどうぞ」 「乱歩さん、こっちもどうです?」 大の男が三人、華奢なテーブルを囲んでいた。 テーブルの上には空になったお菓子の個包装。その数ざっと20。 確かこのお菓子は一箱に7袋入っていたはずだから……と考えてみれば、転がっている箱の中身が空なのだと予想もつく。 「ん?遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」 無言のままテーブルに歩み寄った気配に気付いたのか、もぐもぐと頬張ったお菓子を咀嚼しながら視線を向けた乱歩くんが、不機嫌そうに言葉を吐き出した。 「あ、あの。沙希さんもどうぞ」 おずおずと差し出された手の上の菓子袋。敦くんが差し出したのは、真ん丸なお月様を連想させるクッキーだ。 「……分かってますよ、沙希さん。あまり与えすぎないでくれ…でしょう?」 肩を竦めた太宰くんが椅子から立ち上がる。 ことん、とテーブルに置かれた菓子の箱。チョコクッキーのパッケージが可愛らしい。 「さて、と。敦くん、行くよ」 「え?」 クッキーの箱を手に敦くんがきょとんとする。太宰くんはちらりとこちらに視線を向け口許に笑みを浮かべた。 「邪魔者は退散しないとね」 「……あっ、そ、そうですね」 ハッとした顔をして慌てて菓子箱をテーブルに置くと、敦くんは既に背を向け歩き出していた太宰くんを追い掛けて行った。 洋館の陰に消えて行く二人を見送っていると、不意に上着の裾が引かれた。 「そこ、座りなよ」 「あ、はい」 太宰くんが座っていた椅子に腰を下ろせば、頬にお菓子の欠片を付けた乱歩くんと正面から向かい合うことになった。 「なに?」 またひとつ個包装を破る乱歩くんに、溜め息を吐いてから手を伸ばして頬のお菓子の欠片を拭った。 「子供みたいに食べこぼさないでください」 見開かれた目がわたしを見つめる。そして、それはすぐに細められた。 「君がそうやって拭ってくれるんだから、いいだろ」 「わたしはあなたの保護者ですか」 呆れてそう返せば、乱歩くんはテーブルに頬杖をついて口許に笑みを浮かべた。 「保護者、ね」 「なに?……あっ!」 唐突に掴まれ引っ張られた手に、テーブルに身を乗り出し気味だった体がバランスを崩す。 何をするのだと抗議しようとして、わたしはそのまま固まっった。 「どうしてこんなにお菓子ばかり食べてたと思う?」 「え、あの?」 顔が近すぎて慌てるしかない。近すぎる距離で射竦める目は普段と違って開かれていて……それは、先ほどまでお菓子を頬張っていた子供のような顔とは違う、年相応の表情を見せていた。 「君の帰りが遅すぎて、口寂しかったからに決まってるだろ」 「んっ!」 甘い味がした。 逃げようとすれば、後頭部に回った手がそれを阻止する。 貪るような接吻は、離れていた時間を埋めるように長く続いて……ようやく解放された時には抗議の言葉を口にする気も失せてしまっていた。 「ほら、口開けて」 椅子を移動させて隣にやって来た乱歩くんが、個包装を開けたお月様のようなクッキーを差し出してくる。 「早く」 唇に押し付けられ急かされてしまえば、わたしはもう大人しく口を開くしかなかった。 PR