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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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甘く…蕩けそうな…【スレイヤーズ/ルナゼロ】

ルナ→ゼロスなバレンタイン話
何処までも甘々ですよ

甘く…蕩けそうな…




「あ、いいところに出没したわね。」

 微笑みと共に掛けられた声に、ゼロスは無意識のうちに身体を硬直させた。

「お、おや…ルナさん。お久しぶりです。」

「3日前、リアランサーの屋根の上にいたでしょ?」

 

 肩をすくめ、ルナは僅かに身を引いている黒い神官へ、つかつかと歩み寄る。

 指を突きつけられ、ゼロスは言葉に詰まった。

「何をしにきたの…?」

「それは、ひ……」

「…って、大体見当がついているから、聞かなくてもいいわ」

 お得意のセリフを、またしても途中で止められ…自分の好物を自給自足してしまう。

 どうしてこの人を相手にすると、上手く立ち回れないのかが謎である。

 

「まあ、それはそれとしてよ。こんな所で何してんの?」

「ああ、ソレは・・・」

 苦笑を浮かべ、ゼロスは頭をかいた。

「町中お祝いムードたっぷりなんで…・・・」

「逃げてきたの?」

「そういうわけです。」

 大仰に溜息をついたゼロスを面白そうに見ながら、ルナは僅かに思案顔をする。

 

「ルナさん?」

 突然訪れた沈黙に、さすがに、何らかの身の危険を感じるゼロス。長くはないが無闇に濃い付き合いの中で、何となく分かるようになった感覚だ。

「あの~」

 沈黙が長ければ長いほど、不安が募ってゆく。

 ――嗚呼…不安を与える側の魔族なのに…

 

「ゼロス♪」

 沈黙の末、ルナは満面の笑みを目の前の獣神官へ向けた。

「は、はひっ!?」

 不安が的中した。

 今、ルナが発している感情が、徐々に自分を蝕んでいくのが分かる。

「町中が何のお祝いしてるか、知ってる?」

「え、ええ、まあ……」

「じゃ、説明する必要ないわよね?」

 言って、ルナが取り出したのはピンク色の紙に包まれた何か。

「え~っと……」

「受け取らなかった場合、制裁が待っているからね?」

 手の中に捻じ込まれた包み。

 恐らくは……

 

「手作りだから、この場で一つは食べなさいね。」

「は……はい・・・」

 有無を言わせぬ笑顔。

 泣きそうになりながら、包みを開く。

 中から現れたのは、綺麗に整列した一口大のチョコレート数個。

 意外と普通だったことに、ゼロスは少し安心した。

 …ルナのことだ。開いた瞬間、自分に害を与えるような仕掛けをしていたとしてもおかしくない。

 

「じゃ、じゃあ一ついただきます。」

「どうぞ。」

 じっと見つめられていては落ち着かない。

 思わず目をつぶって、ゼロスはチョコの一つを摘まんで口に入れた。

 甘く蕩けて広がる風味。

 

「どう?」

「いえ…美味しいですよ。」

「あら、そう?」

 微笑み、ルナが一歩近づいた。

「え?ルナさん?」

「じゃ、わたしも味見しようかしら…」

 

 

 街から外れた小高い丘。

 あまり人の訪れない場所。

 それは本気か、嫌がらせか……

 本心は本人のみぞ知るわけで……

 

 

「…………」

 突然のキスに、石化したようにその場に固まってしまったゼロスを放置して、ルナは踵を返すと丘を後にした。

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