甘く…蕩けそうな…【スレイヤーズ/ルナゼロ】 2007年05月01日 スレイヤーズ/騎士と神官 0 ルナ→ゼロスなバレンタイン話 何処までも甘々ですよ 甘く…蕩けそうな… 「あ、いいところに出没したわね。」 微笑みと共に掛けられた声に、ゼロスは無意識のうちに身体を硬直させた。 「お、おや…ルナさん。お久しぶりです。」 「3日前、リアランサーの屋根の上にいたでしょ?」 肩をすくめ、ルナは僅かに身を引いている黒い神官へ、つかつかと歩み寄る。 指を突きつけられ、ゼロスは言葉に詰まった。 「何をしにきたの…?」 「それは、ひ……」 「…って、大体見当がついているから、聞かなくてもいいわ」 お得意のセリフを、またしても途中で止められ…自分の好物を自給自足してしまう。 どうしてこの人を相手にすると、上手く立ち回れないのかが謎である。 「まあ、それはそれとしてよ。こんな所で何してんの?」 「ああ、ソレは・・・」 苦笑を浮かべ、ゼロスは頭をかいた。 「町中お祝いムードたっぷりなんで…・・・」 「逃げてきたの?」 「そういうわけです。」 大仰に溜息をついたゼロスを面白そうに見ながら、ルナは僅かに思案顔をする。 「ルナさん?」 突然訪れた沈黙に、さすがに、何らかの身の危険を感じるゼロス。長くはないが無闇に濃い付き合いの中で、何となく分かるようになった感覚だ。 「あの~」 沈黙が長ければ長いほど、不安が募ってゆく。 ――嗚呼…不安を与える側の魔族なのに… 「ゼロス♪」 沈黙の末、ルナは満面の笑みを目の前の獣神官へ向けた。 「は、はひっ!?」 不安が的中した。 今、ルナが発している感情が、徐々に自分を蝕んでいくのが分かる。 「町中が何のお祝いしてるか、知ってる?」 「え、ええ、まあ……」 「じゃ、説明する必要ないわよね?」 言って、ルナが取り出したのはピンク色の紙に包まれた何か。 「え~っと……」 「受け取らなかった場合、制裁が待っているからね?」 手の中に捻じ込まれた包み。 恐らくは…… 「手作りだから、この場で一つは食べなさいね。」 「は……はい・・・」 有無を言わせぬ笑顔。 泣きそうになりながら、包みを開く。 中から現れたのは、綺麗に整列した一口大のチョコレート数個。 意外と普通だったことに、ゼロスは少し安心した。 …ルナのことだ。開いた瞬間、自分に害を与えるような仕掛けをしていたとしてもおかしくない。 「じゃ、じゃあ一ついただきます。」 「どうぞ。」 じっと見つめられていては落ち着かない。 思わず目をつぶって、ゼロスはチョコの一つを摘まんで口に入れた。 甘く蕩けて広がる風味。 「どう?」 「いえ…美味しいですよ。」 「あら、そう?」 微笑み、ルナが一歩近づいた。 「え?ルナさん?」 「じゃ、わたしも味見しようかしら…」 街から外れた小高い丘。 あまり人の訪れない場所。 それは本気か、嫌がらせか…… 本心は本人のみぞ知るわけで…… 「…………」 突然のキスに、石化したようにその場に固まってしまったゼロスを放置して、ルナは踵を返すと丘を後にした。 PR