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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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あの日、この日、流れる時間 。【夏目友人帳】

突発の夏目初二次創作小説。
不意に浮かんできたものを、勢いで書きました。
ある夕方の風景。レイコと斑、そして夏目とニャンコ先生



あの日、この日、流れる時間 。




「ねえ、斑。」

 遠く、空の向こうを風に乗って飛ぶ鳥を見つめながら、夏目レイコが呟いた。

「ちょっと、返事くらいしなさいよ、斑。」

 くすくす、とどこか楽しそうに。
 でも、唇をへの字に曲げながら、ちらり…と肩越しに振り返るレイコ。

 ガサガサ…と揺れる草むら。
 常人には、単なる風のそよぎにしか映らぬそこに、レイコの瞳は白く大きな獣の姿を見出していた。

「なんだ。」

 そっけなく、欠伸混じりに返す声は、誰にも聞こえることはない。
 レイコの耳には、はっきりと届く…人間ではないモノ――妖怪の声。

「退屈、なんだけど。」
「知るか。」

 傾き始めた陽。
 傍らに放り出した鞄。
 学校帰りに寄り道したそこは、レイコのお気に入りの場所の一つだった。

「たまには真面目に『宿題』でもしに帰ればいいだろう。」
「いやよ。面倒くさい。」

 ごろり、横になると、頬を草が撫でる。
 レイコは寝転がったまま大きく伸びをした。

「それなら、私と勝負でもしろ。」
「それもいや。」

 少し身を起こした斑へと、そっけなく返すレイコ。
 ごろん、と寝返りをうつと、そよそよと揺れる花が目に付いた。

「斑とは勝負する気はないって言ってるでしょ。」

 くすくす、と笑いながら、目の前で揺れる花を指先でつつく。

 カァカァと鳴きながら、烏が山へ帰ってゆく。
 遠く、きゃっきゃっとはしゃぐ小学生の声が響いていた。

「……帰ろっ、かな。」

 勢いをつけて起き上がり、レイコは暮れ始めた空を見上げた。

「帰れ、帰れ。」
「あら、つれないわね。」

 放り出していた鞄を拾い上げ、はたはたとスカートをはたく。

「じゃ、ね。斑。」

 ひらひらと手を振り、レイコは歩き出した。


 がさがさと揺れる草むら。
 遠ざかってゆくレイコの後ろ姿を見送って、斑は前足の間へ顔を埋めた。



 何の変哲もない、ただの夕方。
 人間の身にとっては、人生の中の一コマ。
 妖怪にとっては……長い長い時間の中の、ほんの一瞬。











「先生!ニャンコ先生!!」

 ガサガサと足元の草むらが揺れる。
 普通の猫にしては大きな顔が、草の間から現れた。

「なんだ、そんなところにいたのか。」
「何だ、夏目。」

 ふ…と夏目貴志が浮かべた微笑は、彼女が滅多に浮かべることのなかったもの。
 けれど、それは、とても似ていると……彼は思う。

 ほんの50年程の時間。
 妖怪にとっては、とても短い時間。
 人間にとっては……長い…年月。

「夕飯だぞ。帰ろう。」
「おっ!今日は何だ?」


 あの日、小さくなる背中を見送った夕陽の中。
 今日は、共に歩き、帰る夕暮れの道。



 ずっと続くと思っていた日々。
 消えてしまった、あの日々。
 そして出会った、新しい日々。

 それは、ある意味変わらぬ騒がしい毎日。
 失いたくはないと思い、すぐに否定してしまいたくなるけれど…
 きっと、大切な時間。








突発的に浮かんできた風景です
続の5話のヒノエの話にツッコミ入れてるニャンコ先生見てたら浮かんできました。
なんとなく、斑とレイコさんの関係は、こんな感じだったらいいな…なんて。
ヒノエの言うレイコさんと、ニャンコ先生の言うレイコさんって、何だか真逆な印象を受けます
どっちが正しいのかな…なんて思うけど、どっちもレイコさんなんだろうなって…
「レイコ好き」なヒノエだからこそ、外に出さないレイコさんの本当に気付いてたらちょっと萌える…

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