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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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WITH 3【最遊記 三空】

【最遊記/三空】
過去に友人の三空本へ寄稿した中編作品です



WITH 3


「三蔵、大丈夫か?」
 幼い、金色の瞳が不安そうに見つめてくる。
「うるせえ……」
 今は、悪態をつくことすら辛い。
 低い背を補うために椅子に椅子に立ち上がった悟空が、腕を伸ばし三蔵の額に乗せたタオルを取る。
「熱、下がったか?」
 言いながら、手を額にあてる。
 触るな。と言いたいところだが、そんな元気もない。



 少しばかり無理をし過ぎたのかもしれない。
 今朝目覚めたとき、ベッドから起き上がることすらできなかったのだ。
 熱がかなり高いのが、身体のだるさや関節の痛みから分かった。
 いつものように元気よく起きた悟空がその三蔵の様子に驚き、ひたすら「三蔵、どうしたんだよ三蔵」と繰り返しながらオロオロし始めた。
 偶然やってきた僧が三蔵の容体を『風邪』であると判断し、悟空を宥めてやらなければ、いつまでもその状態が続いていただろう。
 その後は、悟空は懸命に三蔵の看病を始めた。
 小さな体で動き回り、厨房で粥を作ってきてもらったり、洗面器を抱えて水を替えてきたり、ずっと傍についてタオルを代えたり……
「ちょっと下がったかもしれないな。」
 小さく微笑んで、悟空はぬるくなったタオルを洗面器の水に浸した。
 固く絞って、もう一度椅子の上へと上がると、悟空は三蔵の額へとタオルを乗せ直す。
 ひんやりとした感触に、ほんの少しだがほっとする。
 椅子の上でひざを抱くように座った悟空が、じっとこちらを見つめてくる。
 はっきり言ってうざったい。
 いつもに比べて静かなことは有り難かったが、心配気に見られることも、傍に居続けられることもなんだかうっとおしかった。
「後で厨房でお粥作ってもらうから、ちゃんと食べろよな。」
 あどけない微笑みを浮かべて、悟空が言う。
「勝手にしろ。」
 視線から逃れるように、悟空に背を向けた。



 窓から差し込んでくる日の光に、三蔵は目を覚ました。
 悟空が運んできた温かい粥を促されるまま食した後、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
 どうやら、熱は下がったようだ。
 体を起こそうとしてふと気付くと、昨晩そのまま寝てしまったのであろう悟空の姿。
 ずっとついていてくれたのだと気付いて、少し……ほんの少し……三蔵の心の奥の方に、嬉しさ……だろうか……名付けようのない何か温かなものが生まれる。
「………」
 無言のままで、そっと悟空の頭に触れた。
 不慣れな手つきで頭を撫でる。
 傍に誰かがいてくれた。ということに、面倒臭さ以外のものを感じるなんて、彼にとって、そうはあり得ることではなかったから、生まれた感情に名付ける術がない。
 けれど……
 知らず知らずのうちに、口元が緩む。

 ふと、三蔵は悟空の頭を撫でていた手を止めた。
 悟空の様子がおかしいのに気付いたのだ。
「おい悟空。」
 声を掛けてみても、軽く身体を揺さぶっても目を開かない。
 心なしか頬の色が赤く見える。
 息遣いが激しいのは気のせいか。
 いや……
 まさかと重い額に手を当てると……熱い。
「チッ」
 思わず舌打ちする。
 すぐにベッドから降り、悟空を抱き上げると代わりにベッドに寝かせる。
 風邪で倒れたものの看病なんてやったこともないから、どうすればよいのか分からなかった。
 とりあえず、悟空がやってくれたように冷たい水で濡らしたタオルを額に乗せてやる。
 ――それから……
「……どうしろって……いうんだ……」
 苦しそうに呼吸する悟空を前にして、三蔵は焦りと苛立ちに髪を掻き上げた。





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