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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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石の意味を探して【アカセカ/乱巫女】

アカセカの巫女ちゃんと乱歩さんのお話
でも乱歩さん出てきません。子規さん出てきてます。
通常の陽覚醒絆物語に関連してます。
絆物語のネタバレにはなってないはずですが、陽覚醒のネタバレ気味ではあるので閲覧注意。
石の意味を探して



「あれ?」

 書架のタイトルを辿り本を探していた私の背中にかけられた声。
 聞き知っているそれに振り返れば、やはり知っている人がそこにいた。

「何か探し物?」

 私の隣に来て本の背表紙に視線を向ける子規さんに、私は頷いた。
 手伝おうか?と言ってくれた言葉に甘えて探し物のことを伝える。

「石言葉の載っている本?」
「はい。知りたいものがあって」

 じっと私を見つめる双眸が優しげに細められた。

「もしかして……」

 と視線が私の胸元に向けられる。

「そのネックレスの石の意味?」
「え……っ?」

 心臓が跳ねる。
 子規さんは、このネックレスが何なのかも本来誰が持っているはずのものなのかも知っているはずだ。

「それを貰った時に何か言われた?」

 少しだけ悪戯っぽく笑った子規さんに問われ、なぜこれが私の手元にあるのかを彼は知っているのだということに気付く。

「石の意味を知っているかと聞かれました」
「そう……」

 小さく溜め息を吐いた子規さんが視線を私から書架へ移した。
 背表紙に書かれたタイトルを辿り、そのうちの一冊を棚から引き抜く。

「これが詳しく載っていると思うよ」
「あ!ありがとうございます」

 本を受け取り礼を言う私に、子規さんはまた悪戯っぽく笑った。

「ヒントを誰に貰ったかは秘密にしておいてね」

 怒られたくないからと言って、子規さんは踵を返した。
 私はそれを見送ってから閲覧用の机に移動する。
 石の名前を索引で探し、示されている頁をめくる。
 アンダルサイトの項目を見つけて読み始めた。
 無意識に指が石を撫でる。

「えぇっと……」

 なんだかとても前向きな意味の言葉がいくつか書かれてある。

「幸せな大団円……か」

 今回の事件のことを思い出した。
 色々あったけど、無事解決して良かった。
 乱歩さんは迷宮入りにならなくて残念そうだったけど……事件解決のために頑張っていたのを私は傍で見られて良かったと思う。

 ――事件を楽しんでるだけじゃなくて、ちゃんと解決させるために頑張ってるんだなぁ

 少しだけ誤解していたかも……と思いながら、私は石にそっと触れた。

 ――この石は……事件解決の――幸せな大団円の証なんだよね……

 それを私に贈ってくれたことが少し嬉しかった。
 自然と緩む頬。
 これからもそんな乱歩さんの役に立てればいいなと思いながら、ついでにと続きを読む。

「あと、は……」

 希望、恋の予感……

「へぇーそういう意味もあるんだ」

 つまり、この石には『物事をハッピーエンドに導く』力があるのだと説明されていた。

 ――恋……

 ふと引っ掛かりを覚えた単語。

「恋……か」

 脳裏を過ったのは、容疑者として別室に閉じ込められた私を気遣ってくれた乱歩さんのこと。

「っ!?」

 私は慌てて首を振る。

 ――何考えてるの!?

 少しだけ早くなった心臓の音。
 乱歩さんはちょっと変わっているけどすごい人だ。
 そんなすごい人に、私なんかが憧れはしても……

 ……好きになるだなんて迷惑なだけだよね

 本を閉じて、私は溜め息を吐いた。
 ぼんやりと窓から見える茜色の空へと視線を向ける。
 青い空を最後に見てから、もうどれくらい経つのだろう。
 ここではない生まれ育った場所の空を懐かしく思った。
 ちくり……と棘の刺さったような痛みがした気がするけれど、気のせいだと切り捨てて私は立ち上がった。

「遅くなる前に帰らないと」

 本を書架に戻し、閲覧室をあとにする。
 子規さんがいないか探してみたけれど、見つからなかった。

 ――今度会ったときにお礼言わないと

 図書館を出て、宿への道を歩く。
 茜色の空は少しずつ夜の色に変わり始めていた。

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