賑やかな暮らし【tactics】 2009年03月21日 その他版権 0 気づけば人が集まってくる家になっていて… たまには1人も…なお話 賑やかな暮らし 「勘ちゃん!もう、お米が底をついちゃったわよ!」 「勘太郎!!俺のビー玉どこやった!?」 「む~」 「む~ちゃん!どうして、こんな奴の所にばっかり!!」 「一ノ宮~~!!なんだ!この記事はっ!」 「一ノ宮センセ、締め切り過ぎてるんですよッ!」 「ちょっと、勘太郎!」 それは春の昼下がり。 のどかな…とは言いがたい…… 否。 これは、喧しいというのだろう。 一ノ宮家は、いつにも増して賑やかな声が響いていた。 「あ~っ!もう!煩いよ!」 自分を責める皆の声に、勘太郎は、一言叫んで逃亡を企てた。 背中に、みんなの声を聞きながら……… 「いつのまに、この家はこんなに賑やかになったんだろう…」 ひらひらと、桜の花びらの舞う川沿いの道。 溜息をつきながら、勘太郎は呟いた。 一人きりで住んでいた家。 それまでも、時折訪れる人はいた。 依頼人の他、担当や幼馴染などだ。 たまに、妖怪が来ることもあったけれど…… ある日、一匹の妖狐を連れて帰った。 「おかえり」と迎えてくれる存在。 「ただいま」と言える存在。 それはきっと、互いに望んでいた、心休まる日々。 二人暮しが続いて暫くの後。 憧れていた鬼喰い天狗に出会った。 そして彼も、この家に暮らし始めた。 家族が一人増えただけで、華やかになる日々。 某神様夫婦まで、乱入するようになって…… 「今、また一人で、あの家で暮らすなんて考えられないな…」 苦笑を浮かべて、花びら舞う空を見上げる。 帰りたいと思う家。 でも…… 「ほとぼり冷めるまで、帰れないかな」 みんなが諦めて帰ってゆくまで…… 少しくらい、一人きりの時間を楽しむのも……たまにはいいかもしれない。 PR