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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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賑やかな暮らし【tactics】

気づけば人が集まってくる家になっていて…
たまには1人も…なお話
賑やかな暮らし


 
「勘ちゃん!もう、お米が底をついちゃったわよ!」
「勘太郎!!俺のビー玉どこやった!?」
「む~」
「む~ちゃん!どうして、こんな奴の所にばっかり!!」
「一ノ宮~~!!なんだ!この記事はっ!」
「一ノ宮センセ、締め切り過ぎてるんですよッ!」
「ちょっと、勘太郎!」


 それは春の昼下がり。
 のどかな…とは言いがたい……
 否。
 これは、喧しいというのだろう。
 一ノ宮家は、いつにも増して賑やかな声が響いていた。

「あ~っ!もう!煩いよ!」
 
 自分を責める皆の声に、勘太郎は、一言叫んで逃亡を企てた。
 背中に、みんなの声を聞きながら………





「いつのまに、この家はこんなに賑やかになったんだろう…」

 ひらひらと、桜の花びらの舞う川沿いの道。
 溜息をつきながら、勘太郎は呟いた。
 
 一人きりで住んでいた家。
 それまでも、時折訪れる人はいた。
 依頼人の他、担当や幼馴染などだ。
 たまに、妖怪が来ることもあったけれど……
 ある日、一匹の妖狐を連れて帰った。

 「おかえり」と迎えてくれる存在。
 「ただいま」と言える存在。

 それはきっと、互いに望んでいた、心休まる日々。

  二人暮しが続いて暫くの後。
 憧れていた鬼喰い天狗に出会った。
 そして彼も、この家に暮らし始めた。
 家族が一人増えただけで、華やかになる日々。
 某神様夫婦まで、乱入するようになって……
 
「今、また一人で、あの家で暮らすなんて考えられないな…」
 
 苦笑を浮かべて、花びら舞う空を見上げる。
 
 帰りたいと思う家。
 でも……

「ほとぼり冷めるまで、帰れないかな」

  みんなが諦めて帰ってゆくまで……
 少しくらい、一人きりの時間を楽しむのも……たまにはいいかもしれない。

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