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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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あれから一年【遙か1/鷹あか】

京ED後
京に来て一年経った春のある日
神子の可愛いたくらみ



あれから一年


 

「あ……」

 

 強く吹いた風が、御簾の内側まで花びらを運んできた。

 

「そっか……もう一年経つんだよね。」

 

 呟いて顔を上げると、その過ぎた日々を示すかのように伸びた髪が、ふわり…と揺れた。

 

 

 一年前、桜舞う通学路を歩いていたことが、遠い昔のように思える。

 こことは違う…もといた世界に、あかねは思いを馳せた。

 

 

 

「神子様」

 

 髪飾りの涼やかな音が、衣擦れを伴って聞こえてきて…可愛らしい声が、あかねを呼んだ。

 

「どうしたの?藤姫。」

 

 答えると、小さな姫君は大人びた微笑みを浮かべ、来客を告げる。

 

「鷹通殿がいらっしゃったのですが、お支度はお済みですか?」

「うん。じゃあ、行って来るね。」

 

 訪ないは、予ねてからの約束。

 桜が咲いたら、二人で、花を見に行こう…そう、約束を交わしたのが、年が明けてすぐの頃。

 

「あ、藤姫、準備ってできてる?」

「はい。神子様がおっしゃられたものは、全て、ご用意できておりますわ。」

 

 にっこりと、藤姫は微笑む。

 

「ありがとう。」

 

 自分の世界の花見がしたいと思った。

 だから…

 

 敷物と、お弁当と、お団子と…

 もちろん、手伝ってもらいながらだけれど…あかねが作った手料理だ。

 バスケット…は無理だけれど、少し大きい籠に入れて、お花見デート。

 

 用意してもらった籠を持って、あかねは、鷹通の待つ外へ向かう。

 

 お弁当を見て、彼はきっと驚いた顔をするだろう…

 そして、きっと言ってくれるだろう…「美味しい」と

 

 

 

 一年前、不安な心で見上げた春霞の京の空。

 今は……

 愛しい人と、幸せいっぱいで見上げている。

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