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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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こいわずらい【tactics】

蓮見さん、やっこちゃんに一目惚れの現場…の捏造

こいわずらい



 ため息をつく蓮見。
 勘太郎は人の悪い笑みを口元に浮かべつつも、何も言わず蓮見を見遣った。
 

 

 始まりは、数日前の飲み会。
 いつものように、幼馴染のいる店に行った。
 沼田先生も常連だから、学生たちと共に行くが恒例だ。
 
「なんだい、まだ学生やってるのかい?」

 呆れたように勘太郎に告げるやっこ。

「そんなのボクの勝手だろ。」

 それはいつもの会話。
 ここ何年も続いている、いつもの…じゃれあい。

 

 学生の何人かが、お座敷遊びに興じ始める。
 それを眺めながら勘太郎は盃を傾けていた。
 不意に、隣に座り込む誰かの気配。



「?」

 見ると蓮見の姿。

「何?また何か嫌味?」

 不機嫌に告げると、いきなり蓮見は勘太郎の肩を掴んだ。

「えぇっ!」
「おい、一ノ宮!」

 その凄い勢いに気圧される。

「やっこさんとはどういう関係なんだっ!」
「ど、どういうって…」

 思考が停止する。
 何を、蓮見は言っているのだろう?

 「や、やっこちゃんは幼馴染だけど?」
「幼馴染?」
「う。うん。」

 じっと、眼鏡の向こうから、疑惑の視線を送ってくる。
 何なんだ…と胸の内で悪態をつきながら、勘太郎は身構えていた。

「それだけ、なのか?」
「それだけって?」

 訳が分からない。
 問い返した途端、うろたえる様に、蓮見の視線が彷徨った。

「そ。それは。その。こ…こ、こ……」
「こ?」
「恋仲ではないのだな!」
「はぁ!?」

 なんでこの男は、このフケ顔を真っ赤にして、こんな事を聞いてくるのだろう。
 そして、勘太郎は、思い当たる。

「へえ~」

 ニヤリ…と浮かべるのは性質の良くない笑み。
 いいからかいのネタを見つけた…とばかりに見遣る。

「そっか、蓮見、やっこちゃんのこと……」
「ッ!!」

 茹蛸の如く赤くなった男は、からかう様な勘太郎の視線から逃げるように眼鏡を押し上げた。

 
 しかし…
 この男、意外と純粋らしい。
 

 他の学生に引きずられ、共にお座敷遊びに巻き込まれた蓮見を眺めて勘太郎は思う。
 いいからかいのネタになるかと思ったが、あまり苛めすぎるのもよくなさそうだ。
 けれど、弱みとして握っておくのも悪くない。
 
「ま、やっこちゃんのことだから、相手にしてもらえないだろうケドね。」

 呟いて、勘太郎は盃を傾けた。

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