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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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のんびりしよう【スレイヤーズ/ルナゼロ】

パラレル設定。たまにはふたり、のんびりと過ごす昼下がりもいいよね。
パラレルなルナゼロ。同級生だった二人の今の姿。
全く違う道を歩む二人をつなぐ、コーヒータイム。

※パラレル設定のもののためカテゴリー変えています


のんびりしよう



 カランカラン

 軽やかなドアベルの音がして、ルナは顔を上げた。

 晴れた日の昼下がり。
 父親は、またどこかへ旅に出てしまった。
 母親は、仲の良い友達たちとプチ旅行。
 リナは、ガウリイを供に食べ歩きツアー。
 ミルガズィアは久々に、故郷へ里帰り中。
 そして、普段この喫茶店の主をしているルビアは、姉と義兄の墓参りに出かけている。

「おや、ルナさんだけですか?」
「あら。平和なだけあるわね~暇なの?警部殿。」

 他に誰もいないから、今日は、ルナが一人で喫茶店の店番。
 朝から、ほとんど客も入らないから、早いけれど閉めてしまおうかと思っていたところだった。

「ええ、おかげさまで。」
「ふうん。」

 ルナの棘のある皮肉も軽くあしらって、ゼロスは、にこにこ顔でカウンター席へと腰掛けた。
 どうせ、部下たちに全部任せて、抜けてきたのだろう。

 ――ほんっと、不良警部よね…

「ああ、ルナさん。言っておきますけれど、僕は今日非番ですよ。」

 ルナの思考を読んだかのように、にこやかに告げるのは己の潔白。
 ゼロスの胡散臭い笑みを一瞥し、ルナは、水の入ったコップを些か乱暴な手つきでテーブルへ置いた。

「まあ、あたしには関係ないから、どうでもいいけど。」
「でしょうね。」

 水を喉に流し込み、半ばほどまで中身の減ったコップを、几帳面に元通り置いて…
 ゼロスは、頬杖をつきながらルナへと視線を向けた。

「特製ブレンドでいいんでしょ?」

 お代はちゃんともらうけど。
 一言付け加えながら、でもてきぱきと動く手。
 
「できれば、普通のブレンドが……」
「なあに?せっかく『新作ゼロス専用ブレンド』作ったのに?」
「……えぇっと、何入れたか聞いてもいいんでしょうか?」

 おずおずと問う声に、僅かに訪れたのは沈黙。

「厨房に置いてるホウ酸団子…」

 湯の沸く音が、BGMとして沈黙を彩る。

「勘弁して下さい……」
「ちっ」

 命拾いしたわね。
 などという呟きは聞かなかったことにして、ゼロスは残っていた水を飲み干した。



「皆さん、お出かけですか?」
「薄情よねぇ、あたしだけ留守番なんてさ。」

 コーヒーの良い香りが店内を満たす。

 自分の分のカップを手にカウンターから出てきたルナは、ゼロスの隣に椅子一つ空けて腰掛けた。

「まあ、他に何かすることがあるかっていえば、ないんだけど。」
「枯れてますねぇ、ルナさん。」
「あんただって、似たようなものじゃない。」
「ええ、まあ。」

 静かな店内。
 互いにカップを傾ける音だけが僅かに響く。
 外から聞こえる喧騒なんて、別世界の出来事。

「そういえば、何年ぶりですかね。」
「ん?……ああ、そんなの今更だわ。」

 二人で、この店内で、肩を並べてコーヒーを飲んだのは、すでにずっと昔……セピアの記憶の向こう。
 ルナとゼロスとフィリアが、出会ったばかりの頃だっただろうか…

「でも、まあ。」

 カップを置いたゼロスが、頬杖つきながらルナを見た。

「そうね。」

 古い時計が時を刻むのを見つめながら、ルナは小さく唇に笑みを浮かべた。
 たまには、思い出話でもしながら、のんびりコーヒータイムでも過ごそうか。


お題「共にいる幸福で5のお題」【配布元:原生地 様

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