まったりした時間にお題を5つ【スレイヤーズ/ガウリナ】 2008年09月01日 スレイヤーズ/その他 0 パラレル設定で、ほのぼの&甘口 【まったりした時間にお題を 5 つ】より 01.ベッドから抜けられない朝 自然に目覚める前の時間が、とても心地が良い。 意識自体は目覚めていて、でも、リナは布団を被って瞼越しの朝の光を遮断した。 今日は、絶対、昼過ぎまで寝るのだ。 そう心に決めて、ごろり…と窓へ背を向けた。 今日は創立記念日で学校が休み。 こんな特別休暇、のんびり過ごさずしてどうする。 なのに……… 近づいてくる足音は、多分。 ――ああ、あたしの平穏は終わった… 溜息をついて、でもリナは外界と遮断するように布団の中へ潜り込む。 その直後に、ノックすらなしに開く扉。 「リナ!いつまでも寝てるんじゃないわよ!!」 予測はしていても、リナはびくりと体を強張らせた。 近所じゃ気立てのいい娘さんだと評判の姉だけれど…リナにとっては最凶の姉。 「リナ!」 ぎゅぎゅっと、布団を体に巻きつけて、まだ目覚めていないふりをして、リナはルナの声を無視することに決めた。 この姉に、「あと5分」なんて言葉、通用しないのだから… 「起きなさいっ!」 だけど、布団の盾も当然通用しない。 力任せに剥ぎ取られた布団に巻き込まれ、リナはそのままベッドから床へ墜落する。 「いたた…」 ぶつけた頭をさすりながら顔を上げると、不敵な笑みを浮かべ仁王立ちするルナの姿。 これはもう、逆らうなんて出来やしない。 「5分以内に下りてくる!そうしないと朝ごはん抜きよ。」 「ええっ!!」 部屋を出て行き際に残された言葉に、リナは顔面蒼白。 朝ごはん抜きで、店(喫茶店)の手伝いは勘弁してほしかった。 慌てて立ち上がり、大急ぎで着替える。 折角の休みも、お手伝いで終わってしまいそうだった。 02.ひなたぼっこ 「あ~、いい天気。」 「ほんとだなぁ~」 吹き抜けるさわやかな風に、全入居者分まとめて洗濯したシーツが揺れていた。 ゆったりと流れる雲。 ごろり…と寝転がると、周囲の建物などに切り取られた四角い空が見えた。 「ここ、意外と風が通るんだな。」 「でしょ?」 くすくす、と笑いながら、リナが答える。 近年、背の高い建物も増えたけれど、隙間を抜けて吹き抜けてゆく風は昔と変わらない。 「ここ、この季節限定のひなたぼっこスポットなの。」 視線を向けると、自分と同じ格好で寝転がってるガウリイの姿。 人のことを言えないが、長い金色の髪がそよそよと風に揺れていた。 「…といっても、小さい頃はあっちの屋根の上が一番だったんだけどね。」 指差す先には、扉の隣の朽ちかけた梯子。 老朽化が進んで、人が登れなくなった屋上。 「あれ、オレの部屋の上か?」 「そ。危ないから登っちゃダメよ。」 脳裏によぎるのは、登るのが禁止になった日の出来事。 思い出した恐怖に、リナは小さく身震いした。 「どうした?」 「ん?」 鋭いのか何なのか、ほんの小さなリナの変化に気付いて、ガウリイが問う。 リナは観念して溜息をついた。 …隠すようなことでもないのだが…… 「あたしが、10歳くらいの時にね、あの上から落ちかけたの。」 ひなたぼっこに上がった屋上。 気付かなかった朽ちた足元。 リナは、あの日……崩れた足元と一緒に階段の辺りへ落ちそうになったのだ。 「そりゃ、もう大騒ぎ。」 「…悪運強いな…」 どこかズレた感想に、リナは軽くガウリイを睨む。 あの時の恐怖を、コイツは何一つ分かってはくれないのか…と怒りまで込み上げた。 「でも……」 わしゃわしゃ…と、不意にかきまわされる前髪。 「ガウリイ?」 名を呼んでも答えず、ただ無言で頭を撫でる大きな手。 「無事で、よかったな。」 その不意打ちに、リナは慌ててぷいと顔を逸らした。 03.こたつの誘惑 「やっぱ冬はこれよね~」 「あー、最高だな~」 「…………………………」 ごろごろと肩まで布団に潜って、水面下ではぶつかる足が無言の喧嘩。 「ちょっと!」 「痛いだろ!」 「…………………………」 がたん!と起き上がって、睨みあう。 ころり…と、みかんが一つ転がった。 「…あなたたち、少しは静かにできないの!?」 頭を抱え、メフィが呻くように言葉を発した。 「え?」 「へ?」 こたつの4辺。 向かい合ってリナとガウリイが座り、もう2辺には頭を抱えるメフィと、茶を啜る部屋の主・ミルガズィアが座っていた。 「ここは、ミルガズィアおじさまの部屋ですのよ!」 「知ってるわよ。」 うちの住人なんだから。 しれっと答えるリナに、メフィのこめかみに怒りマークがひとつ。 「だって、こたつがあるのミルさんちだけだし。」 どこか的外れな、のほほんとした答えをガウリイが返す。 2つ目の怒りマークは、額に生まれた。 「当のおじさまが、何もおっしゃらないから私も黙っていたけれど!」 「メフィ…」 諦めに似た視線が、ふるふると肩を震わすメフィに向けられた。 いつものことだと、そう言外に告げている。 「でもッ!…………」 はあ、溜息をついて、メフィは座り直す。 言っても無駄なことは分かっている。 何より、部屋の主本人が諦め体制に入っているのだから、遊びに来ているだけの自分がどうこう言えるはずもない。 とりあえず、気を落ち着かせようとメフィは転がったみかんへ手を伸ばした。 「ちょっと!それ、あたしの煎餅よ!」 「オレが先に取ったからオレのだ!!」 ぐしゃ… 毎年の恒例だとは分かっていても、慣れない……否、納得できないものはある。 ぽたぽたと卓を濡らす果汁を片づけるべく、メフィはキッチンへと向かった。 「でもまあ……」 ついでと片付けた食器。 急須の茶葉も入れ替えて、再び戻った部屋の中には、静かになったこたつ周辺の様子。 「こたつの魔力に負けたようだ。」 苦笑を浮かべたミルガズィアが、すやすや眠る2人へと視線を向けた。 「やっと、静かになりましたわ。」 すとん、と座って淹れなおす茶。 暫くは静かな昼下がり。 04.ひざまくら さらさらと零れる栗色の髪。 「子供かよ…まったく……」 食べるだけ食べて、騒ぐだけ騒いで、スイッチの切れたように眠ってしまった少女。 「あら、寝ちゃった?」 ルナの声に顔を上げれば、苦笑を浮かべて毛布を手渡してくれる。 「それ、当分起きないから、しばらくよろしくね。」 「え……」 受け取った毛布をリナの体に掛けて、ガウリイは小さな溜息をついた。 自分のひざまくらで、ぐっすりと寝入ってしまった少女の寝顔を見ながら。 あの日、リナの父親に声をかけられ促されるまま、ここへ連れてこられた。 行く場所もなかったから、そのまま居付いてしまったわけだが…… 最初は、直ぐに飽きるし、長居することもないだろうと思っていたことを思い出す。 「今じゃ、ここから出て行くことなんて考えられないよな…」 リナと共に過ごした時間を思い返して、ガウリイは苦笑を浮かべた。 守ってやりたいと、そう思った日。 あの日、きっと自分の居場所がここなのだと…決まったのだろう。 「ん……」 「リナ?」 リナが小さく身じろぎする。 「ガ……」 どきりと跳ねる心臓。 ――リナ…… 「ガ…ムシロップ、もっと……」 「…………ッ」 一瞬目を点にして、次の瞬間ガウリイは吹き出した。 慌てて、リナを起こしてしまわないように声を抑え、クスクスと笑う。 「そうきたか……」 一体、何の夢を見ているのやら… けれど。 ――オレも、重症だよな…… ただ、流れ着いたこの場所で、穏やかに暮らしていたいだけ この少女と共に、巡る季節を過ごしていたいだけ 05.至福のひとときです 「ちょっと!それ、あたしのよ!」 「あ!こら!オレの取るな!!」 わいわいと、喫茶店・リアランサーでは、閉店後たというのに賑やかな声が響いていた。 アパートの住人と、その友人知人、顔見知りが集まって催される、定例行事となった食事会が行われていた。 珍しく訪れたフィリアが、酔いに任せてカウンターの隅でゼロス相手に説教していたり。 すでに暴走を開始していたアメリアが、椅子に足を乗せて正義とは何かを演説していたり。 お得意のギャグを連発したミルガズィアが、周囲の気温を急激に下げていたり。 賑やか過ぎるにもほどがある…というような状態の中。 今日も、リナとガウリイは食べ物の取り合いをしていた。 「あーもう。お前ら煩い。」 近くにいたインバース氏が、鬱陶しげに騒ぐ2人を睨む。 「今更、よ。父さん。」 くすくす、と追加の飲み物を出してきたルナが、小さく肩をすくめて見せた。 「でもなぁ…」 「近づかなきゃいいのよ。」 ある意味最善策を告げ、ルナはヒートアップするフィリアを止めに向かう。 一応、フィリアも教師なのだから、いい加減、警部殿を虐めるのはやめさせないといけない。 ――放っておいても大丈夫よ、あの2人は。 愚痴を言いながらも、心配性な父親に胸の内でツッコミを入れ、ルナはフィリアの手からグラスを取り上げた。 「あ!ちょっと、リナ!みんなの分まで食べたわね!」 「ひどい!リナ~!!」 「え、何よ。知らないわよ、自分の分は自分で確保しなさいよね!」 メフィとアメリアの抗議に、偉そうに腰に手を当て宣言するリナ。 「って!こら!」 そのすきに、横から確保していたものを取られて、リナはガウリイへ飛びかかった。 「食べている時のお2人は、本当に生き生きしてますね。」 苦笑交じりに、シルフィールが呟く。 げんなりとした表情で、ゼルガディスが溜息をついた。 「もう少し位、静かにしてくれてもいいと思うんだがな…」 いつもと変わらぬ賑やかな日々。 いつしか、皆が共にいることが当たり前になっていて。 この風景自体が、日常に溶け込んで。 その当たり前の時間が、きっと至福のひとときなのだと…… 気付くことはないままで、時間は過ぎてゆく。 お題配布サイト「1141」様より PR