優しい風を感じて【スレイヤーズ/ガウリナ】 2011年02月02日 スレイヤーズ/ガウリナ 0 『共にいる幸で5のお題』より 里帰り編ネタです 優しい風を感じて 目を閉じて、吹き抜けてゆく風に身を任せてみれば。 凝り固まっていた哀しい記憶が、全部、風と一緒に体を抜けて後ろへ飛んで行くような気がした。 「リナ~」 呼ばれて振り返れば、丘を上って来る『自称保護者』の姿。 否。 正確には、もう保護者…ではなく、近い未来の伴侶とでも言うべきか。 全部終わって。 なんとなくでゼフィーリアに里帰りしてきて。 あれよあれよという間に、二人の立場は微妙に変わった。 ……変わらないのは、きっと、共にいるのだということだけ。 「よく、ここが分かったわね。」 「ルナさんから聞いた。」 答えながら、リナの隣へと、ガウリイは腰を下ろした。 ふうん。 小さく相槌を打ちながら、リナも、同じようにストンと腰を下ろす。 「………一人で泣きたい時は、大抵ここに来るからって………」 「姉ちゃん………」 ――余計なことを… 大きく溜息をついて、リナは呟いた。 よりによって、ガウリイにそんなことを話すだなんて… 「別に、泣きに来たわけじゃないからね。」 「考え事……だろ。一人で。」 ――なんで、何でも分かっちゃうのよ… ぐしゃ、ぐしゃ。 突然頭を撫でられた。 …と言っても、慣れてしまったことだから、別段驚くものでもない。 「――ここ、気持ちいい風が吹いてくるでしょ?」 「ああ」 「いろんなこと、風が全部持ってってくれないかなってさ。」 ――我ながら、他力本願とは情けないわ 自嘲気味に呟いて、リナは両手を後ろについて空を見上げた。 「いいんじゃないか?たまになら。」 「たまに?」 「ああ、たまにならな。」 くすくす、とリナが笑う。 ガウリイを見上げると、青い空と同じ色の瞳が優しくリナを見つめていた。 「そうね。」 たまになら立ち止まったっていい。 きっと。 そういうことなのだ。 「風、ほんとに気持ちいいな。」 「でしょ?」 優しい風が二人の髪を揺らす。 大きく伸びをして、吹き抜けてゆく風を全身で受け止めて…… ――そういえば、いつも隣にいてくれたっけ…… 胸の内でありがとうと告げながら、リナはそのまま寝っ転がった。 お題「共にいる幸福で5のお題」【配布元:原生地 様】 PR