忍者ブログ

よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

優しい風を感じて【スレイヤーズ/ガウリナ】

『共にいる幸で5のお題』より

里帰り編ネタです
優しい風を感じて



 目を閉じて、吹き抜けてゆく風に身を任せてみれば。
 凝り固まっていた哀しい記憶が、全部、風と一緒に体を抜けて後ろへ飛んで行くような気がした。


「リナ~」

 呼ばれて振り返れば、丘を上って来る『自称保護者』の姿。
 否。
 正確には、もう保護者…ではなく、近い未来の伴侶とでも言うべきか。

 全部終わって。
 なんとなくでゼフィーリアに里帰りしてきて。
 あれよあれよという間に、二人の立場は微妙に変わった。
 ……変わらないのは、きっと、共にいるのだということだけ。

「よく、ここが分かったわね。」
「ルナさんから聞いた。」

 答えながら、リナの隣へと、ガウリイは腰を下ろした。
 ふうん。
 小さく相槌を打ちながら、リナも、同じようにストンと腰を下ろす。

「………一人で泣きたい時は、大抵ここに来るからって………」
「姉ちゃん………」

 ――余計なことを…
 大きく溜息をついて、リナは呟いた。
 よりによって、ガウリイにそんなことを話すだなんて…

「別に、泣きに来たわけじゃないからね。」
「考え事……だろ。一人で。」

 ――なんで、何でも分かっちゃうのよ…

 ぐしゃ、ぐしゃ。

 突然頭を撫でられた。
 …と言っても、慣れてしまったことだから、別段驚くものでもない。

「――ここ、気持ちいい風が吹いてくるでしょ?」
「ああ」
「いろんなこと、風が全部持ってってくれないかなってさ。」

 ――我ながら、他力本願とは情けないわ

 自嘲気味に呟いて、リナは両手を後ろについて空を見上げた。

「いいんじゃないか?たまになら。」
「たまに?」
「ああ、たまにならな。」

 くすくす、とリナが笑う。
 ガウリイを見上げると、青い空と同じ色の瞳が優しくリナを見つめていた。

「そうね。」


 たまになら立ち止まったっていい。

 きっと。
 そういうことなのだ。


「風、ほんとに気持ちいいな。」
「でしょ?」

 優しい風が二人の髪を揺らす。
 大きく伸びをして、吹き抜けてゆく風を全身で受け止めて……

 ――そういえば、いつも隣にいてくれたっけ……

 胸の内でありがとうと告げながら、リナはそのまま寝っ転がった。


 お題「共にいる幸福で5のお題」【配布元:原生地 様

拍手

PR