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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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一緒な幸せ【遙か4/葦原家】

葦原家・過去捏造
『共にいる幸福で5のお題』より
3人共にいられるならそれが一番


一緒な幸せ



「ねえ。これ、やろうよ!」

 三人で揃って出掛けた寺の境内。
 千尋が見つけたのは、境内スタンプラリーのチラシだった。
 素早く三人分の台紙を確保してきた千尋が、きらきらと好奇心旺盛な瞳で、千尋が那岐と風早の腕を引っ張った。

「やだよ、面倒くさい。」
「面白そうですね。」

 真逆の答が返ってきて、千尋は、全力で拒否した那岐に手にした紙を突き出す。

「だって!これ全部集めたら、500円の数珠がタダで貰えるんだよ!」
「どうだっていいし、そんなの。」

 背中を向けてしまった那岐の腕を、決して離すまいと掴む千尋。
 ゲンナリとした顔で肩越しに振り返る那岐へ、ウルウルと、今度は泣き落としの準備。

「泣き落としとか、卑怯だろ。」
「まあ、せっかくだから千尋につきあいましょう。」

 風早のにこにこ顔。
 千尋の味方を得て勝ち誇った顔。

「あんたは千尋を甘やかせすぎだろ……」

 はあ……
 大げさな溜息を吐きながら、那岐は、いつもどおり負けを認めるしかなかった。


「歪んだ・・・」

 何回も何回も多くの人に押され続けたスタンプは、すでに周りから丸くなっていて、少し押しづらくなっていた。

「別にいいだろ、それで。」
「よくない!」

 何故だか、その少し押しづらいスタンプを、千尋は真っ直ぐにクッキリ押そうと躍起になっていた。
 那岐が適当に、風早が丁寧に、それぞれ押した後に気合を入れて押してみれば、どういうわけか千尋のものは歪になってしまう。

「だって、二人は、ちゃんと綺麗に押せてるんだもん。」

 だから自分だって綺麗に押したいのだと、千尋は頬を膨らませた。
 那岐は、今日、幾つめか分からない溜息を吐いて、手にした紙を、インクを乾かすためにひらひらさせる。
 
「俺が押しましょうか?」
「ダメ!自分でやるの!」
「たかがスタンプラリーで、何、必死になってるんだか…」

 風早の助け船にも、半分意固地になって、千尋は次のポイント目指して歩き始めた。



「縁結・・・だってさ」
「縁結び・・・って言っても別に恋愛だけじゃないんですよ。」

 先にスタンプを押した那岐の言葉を受けて、風早が蘊蓄を語りだす。
 けれど、気合を入れてスタンプを構える千尋は、ほとんど話を聞いていなかった。
 呆れ顔で、話を続ける風早と、なんとなくの結果が予想できる千尋を、那岐は横目で観察する。

「よし、今度こそ!………ああっ!!」

 やっぱり…と軽く頭痛を起こした頭を押さえて、那岐は悲壮な声を上げた千尋の手元を覗き込んだ。

「結べてないよ?縁。」
 
 吹き出した那岐が発した言葉に、千尋は愕然とスタンプを見つめた。
 横から覗きこんできた風早も、苦笑交じりに、おやおや……と呟く。
 『縁結』という文字の『結』の字が欠けている。
 完全に落ち込んでしまった千尋が、肩を落として俯いてしまった。

「千尋、大丈夫です。」

 穏やかな風早の声に、千尋はおずおずと顔を上げた。
 振り返ると、風早が微笑んでいる。

「ほら、俺や那岐との縁はちゃんと結べています。」
「こんなの、ただのスタンプだろ?気にしなくていいんじゃないの?」

 風早の穏やかな言葉。
 那岐の呆れたような声。
 千尋は、二人とスタンプ台紙を見比べた。

「ほら、千尋。まだ半分残ってますよ。」
「千尋。さっさと終わらせて帰ろう。」

 千尋が『縁結』のスタンプに重ねていた感情を、きっと二人は気づいていたのだろう。
 戸惑う千尋を、二人が肩越しに振り返って見る。
 もう一度スタンプ見て、二人を見て……千尋は足を踏み出した。
 縁の結ばれた二人と一緒にいるために。



大半が実話だったりとかする
実際に「結」べなかった「縁結」の写真は、日記のどこかに埋まってます(笑)
きっちりしてるのがいいと髪形のことを言ってた千尋ですから、スタンプもやはり…
縁結びの件ですが、千尋の抱く無意識の不安は男二人の方がよく分かってそうだ


お題「共にいる幸福で5のお題」【配布元:原生地 様

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