秋の夜長【スレイヤーズ・ガウリナ】 2006年11月03日 スレイヤーズ/ガウリナ 0 ほのぼのでちょっとシリアスなガウリナ。 冷え込む秋の夜長は、一人でいるより二人がいい。 離れて初めて、それに、気付くもの… 秋の夜長 空が高い。 あたしは、立ち止まってため息をついた。 こんなにきれいな夕焼けなのに……あたしは…… 今朝のことを思い出す。 今……隣にいない、アイツのことを……。 今朝。あたしとガウリイは街道でレッサーデーモンの団体さんと出くわした。 あたしがいつも通りだったら、難無く2人で切り抜けられるくらいのものだったのだが…… いかんせん……あたしは、今、魔法が使えなかったりする。 それで…… 「どこ行っちゃったのよ……」 あたし一人を逃がし、ガウリイは一人残った。 見つからない。 あたしは……街道を独り、ボーッと歩いている。 「追いつくって言ったのに……」 ガウリイに限って、やられちゃったなんてことはありえないけど……迷子なだけなんだって思うけど…… 不安が……消えない…… あたしらしくない。 何で……こんなにうじうじしてるんだろう…… 「……今夜は……野宿ね」 暮れかけた空に、あたしはポツリと呟いた。 * * * ……寒い…… 陽の出ているうちは暖かかったのだが、日も暮れて夜ともなると、かなり冷え込んできた。 そっか……もう、こんな季節なんだ…… 火に当たりながら、あたしは小さく背中を震わせた。 街道沿いの森の中。 「……おいしくないや……」 携帯食をかじりつつ、また、ため息。 いつから……あたしは、ひとりでいられなくなったんだろう。 隣にガウリイがいないと……落ち着かない……安心…できない……心が……寒い…… どうして……? 「あたしの居場所は、あんたの側なんでしょっ!」 炎に向かって怒鳴る。 いつだったか、アメリアが何やら期待したような瞳で話してくれた。 あの冥王の事件のとき、ガウリイが言ったって…… ……信じて…いたい。 「一生、あたしの保護者でいるんでしょっ!」 再び炎に向かって怒鳴った、その時。 「当たり前だろ」 声が聞こえた。 聞き覚えのありすぎる……声が…… 「っ!?」 あたしはあわてて振り返った。 ガサガサと茂みを揺らして現れる人影。 長い金色の髪が炎に照り映える。 「っ!!ガウリイ!」 「やっと見つけた。」 安堵のため息をついて、ガウリイがあたしの隣へやってくる。 くしゃり、と髪をかきまわされる。 「よかった。よかった。リナが無事で。」 「……………」 あたしは無言で俯いた。 「いやぁ。リナが向かった方向、見失ってなぁ……大変だったぞ。」 のほほん。問って笑うガウリイ。 ……… すっぱーんっ! 「このくらげっ!」 そのガウリイの頭を、スリッパではたく。 「お前なっ!……って…へ?」 ガウリイの抗議の声が途中で途切れる。 あたしが、胸に顔を埋めてきたのに気づいて……。 「リナ?」 「……あったかい……」 ぎゅっ、とガウリイにしがみつく。 ガウリイのぬくもりに、心の寒さが癒される。 安心感が、体中に広がった。 「……リナ……」 小さく、あたしの名を呟いて、ガウリイがあたしを抱き締めてくれる。 ガウリイの指があたしの髪を、ゆっくりと梳く。 なんだか、すごく心地いい。 あたたかな気持ちが胸の奥から体中に広がってゆく。 ガウリイが傍にいる……そんな日常のことが、とても大切なものに感じた。 ぐーーーーっ 「え?」 突然聞こえた音にあたしたちは頭を上げた。 「なに?今の音……」 「…………オレの、腹の虫。」 思わず、二人そろって大爆笑。 携帯食を二人で食べる。 ……やっぱり、食事は二人で食べないと……。 おいしくない携帯食も、一人だと余計まずくなっちゃうもの。 「もしかして、ずっと食べてなかったの?」 一息ついて、問うあたしに、 「まあな。リナ探す方が大事だったから」 微笑んでそう答えるガウリイ。 どきんっ! あたしは、あわてて視線をそらす。 頬が熱くなっていた。 「なっ、何言ってんのよっっ!………って!?」 突然引っ張られた。 「へ?」 気づいたら、ガウリイの腕の中。 かあぁぁぁーっ! さっきは勢いで抱き着いちゃったけど……さすがに今度は真っ赤になる。 「ちょっ!」 「人間カイロ。寒い秋の夜長に最適ってな。」 笑いながら、暴れるあたしをしっかりと抱きすくめてしまう。 「はなせーっ!」 長くて寒い秋の夜は、ゆっくりと更けていった…… ……ぢゃ、ないっっ! おわり PR