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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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秋の夜長【スレイヤーズ・ガウリナ】

ほのぼのでちょっとシリアスなガウリナ。
冷え込む秋の夜長は、一人でいるより二人がいい。
離れて初めて、それに、気付くもの…


秋の夜長


  

 空が高い。

 

 あたしは、立ち止まってため息をついた。

 こんなにきれいな夕焼けなのに……あたしは……

 今朝のことを思い出す。

 今……隣にいない、アイツのことを……。

 

 今朝。あたしとガウリイは街道でレッサーデーモンの団体さんと出くわした。

 あたしがいつも通りだったら、難無く2人で切り抜けられるくらいのものだったのだが……

 いかんせん……あたしは、今、魔法が使えなかったりする。

 それで……

 

 

「どこ行っちゃったのよ……」

 

 あたし一人を逃がし、ガウリイは一人残った。

 

 

 見つからない。

 

 あたしは……街道を独り、ボーッと歩いている。

 

「追いつくって言ったのに……」

 

 ガウリイに限って、やられちゃったなんてことはありえないけど……迷子なだけなんだって思うけど……

 

 不安が……消えない……

 

 あたしらしくない。

 何で……こんなにうじうじしてるんだろう……

 

「……今夜は……野宿ね」

 

 暮れかけた空に、あたしはポツリと呟いた。

 

 

*     *     *

 

 

 ……寒い……

 

 陽の出ているうちは暖かかったのだが、日も暮れて夜ともなると、かなり冷え込んできた。

 

 そっか……もう、こんな季節なんだ……

 

 火に当たりながら、あたしは小さく背中を震わせた。

 

 街道沿いの森の中。

 

「……おいしくないや……」

 携帯食をかじりつつ、また、ため息。

 

 いつから……あたしは、ひとりでいられなくなったんだろう。

 隣にガウリイがいないと……落ち着かない……安心…できない……心が……寒い……

 どうして……?

 

 

「あたしの居場所は、あんたの側なんでしょっ!」

 炎に向かって怒鳴る。

 

 

 いつだったか、アメリアが何やら期待したような瞳で話してくれた。

 

 あの冥王の事件のとき、ガウリイが言ったって……

 

 ……信じて…いたい。

 

「一生、あたしの保護者でいるんでしょっ!」

 

 再び炎に向かって怒鳴った、その時。

 

「当たり前だろ」

 

 声が聞こえた。

 聞き覚えのありすぎる……声が……

 

「っ!?」

 

 あたしはあわてて振り返った。

 

 ガサガサと茂みを揺らして現れる人影。

 長い金色の髪が炎に照り映える。

 

「っ!!ガウリイ!」

 

「やっと見つけた。」

 

 安堵のため息をついて、ガウリイがあたしの隣へやってくる。

 

 くしゃり、と髪をかきまわされる。

 

「よかった。よかった。リナが無事で。」

 

「……………」

 

 あたしは無言で俯いた。

 

「いやぁ。リナが向かった方向、見失ってなぁ……大変だったぞ。」

 

 のほほん。問って笑うガウリイ。

 

 ………

 

 すっぱーんっ!

 

「このくらげっ!」

 

 そのガウリイの頭を、スリッパではたく。

 

「お前なっ!……って…へ?」

 

 ガウリイの抗議の声が途中で途切れる。

 あたしが、胸に顔を埋めてきたのに気づいて……。

 

「リナ?」

 

「……あったかい……」

 

 ぎゅっ、とガウリイにしがみつく。

 ガウリイのぬくもりに、心の寒さが癒される。

 安心感が、体中に広がった。

 

「……リナ……」

 

 小さく、あたしの名を呟いて、ガウリイがあたしを抱き締めてくれる。

 ガウリイの指があたしの髪を、ゆっくりと梳く。

 

 なんだか、すごく心地いい。

 

 あたたかな気持ちが胸の奥から体中に広がってゆく。

 ガウリイが傍にいる……そんな日常のことが、とても大切なものに感じた。

 

 ぐーーーーっ

 

「え?」

 

 突然聞こえた音にあたしたちは頭を上げた。

 

「なに?今の音……」

「…………オレの、腹の虫。」

 

 思わず、二人そろって大爆笑。

 

 

 

 携帯食を二人で食べる。

 

 ……やっぱり、食事は二人で食べないと……。

 

 おいしくない携帯食も、一人だと余計まずくなっちゃうもの。

 

 

 

「もしかして、ずっと食べてなかったの?」

 

 一息ついて、問うあたしに、

 

「まあな。リナ探す方が大事だったから」

 

 微笑んでそう答えるガウリイ。

 

 どきんっ!

 

 あたしは、あわてて視線をそらす。

 頬が熱くなっていた。

 

「なっ、何言ってんのよっっ!………って!?」

 

 突然引っ張られた。

 

「へ?」

 

 気づいたら、ガウリイの腕の中。

 

 かあぁぁぁーっ!

 

 さっきは勢いで抱き着いちゃったけど……さすがに今度は真っ赤になる。

 

「ちょっ!」

「人間カイロ。寒い秋の夜長に最適ってな。」

 

 笑いながら、暴れるあたしをしっかりと抱きすくめてしまう。

 

「はなせーっ!」

 

 

 

 長くて寒い秋の夜は、ゆっくりと更けていった……

 ……ぢゃ、ないっっ!

 

おわり

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