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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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騎士と神官・第0話 決戦前夜<ゼロスサイド>【スレイヤーズ/ルナゼロ】

騎士と神官シリーズ第0話
決戦前夜<ゼロスサイド>


 

「お呼びですか?」

 

 声がして、『彼女』の前の虚空に黒い神官姿の男が現れた。

 

 ばさり……

 

 翼が羽ばたき、虚空に浮かんだ『彼女』のまわりを羽が舞う。

 『彼女』は、その虚空に腰を掛けるかのように足を組んだ。

 

「ゼロス。今から行って欲しい場所があるんだけど。」

 

 言葉は柔らかいが、その口調にはどこか相手に有無を言わせぬものを含んでいる。

 

「また、どこかの『写本』を?」

 

 開いているのか閉じているのか……どちらかよく分からない目を『彼女』に向け、ゼロスと呼ばれた男が問う。

 

 その問いかけに、無言のままで首を振る『彼女』。

 予想と違った応えに、ゼロスは首を傾げた。

 そのゼロスの反応に、小さく笑みを浮かべながら『彼女』は再び翼をはためかせた。

 

ふわり、と地面に降り立ち右手である方向を指し示す。

 幾重にもなった金属製のブレスレットが、しゃらり……と音を響かせた。

 

「ゼフィーリアへ」

 

 しごく簡単に、行先だけを告げる。

 

 

 

「……いや、あの……いきなり格好つけられましても……」

 困ったように頭をかきながら、ゼロスが言う。

 

「…………」

 

 指を指したポーズのままで、『彼女』は沈黙した。

 

 

 

 

 

 

「……もぅ……いいじゃない、別に。」

 

 腰に手をあてて、『彼女』はつまらなそうに唇を尖らせた。

 

「そーゆー気分の時だってあるんだから。」

 くるりと踵をかえし、豪奢なつくりの椅子に腰掛ける。

 

 それを目で追いながら、ゼロスは口を開いた。

 

「それで、僕をお呼びになった訳というのは……」

「あぁ、それそれ。」

 ぽん、と手を打ち、『彼女』はそのまま腕を組んだ。

 

「さっきも言ったけれど、ゼフィーリアへ行って欲しいのよ。」

 足を組みながら言う。

 

「なぜ?」

 問い返すゼロスに、

「――『赤の竜神の騎士』を知ってるわね。」

 意味ありげな視線を向けて言う。

 

「ええ。まあ……」

 それが?という問いかけを含んだ応え。

 

「その赤の竜神の騎士が、ゼフィーリアに居ることが分かってね。

 最近、あんまり羽振りがよいとは言えない私達魔族にとって、少なくとも『敵』と認識できる『人間』であることには違いないから……」

 言ってため息をつく『彼女』。

 

「それで……そこへ乗り込んで、僕にどうしろとおっしゃるんですか?

 ――まさか…殺してこいとか、おっしゃるわけではないですよね……」

「できれば、そうして欲しいとこだけど……

 残念ながら、覇王と海王と話し合った結果、今回は調査のみってことになったら。

 ほら、さっきも言ったけど…最近は私たち高位魔族も羽振りが悪いことだし。

 ――まあ、できそうなら殺してきてもいいけどね。」

 

 言って、小さく笑みを浮かべる。

 

「分かりました。

 ……けど、調査って……興信所のヒトですか?僕……」

 苦笑を浮かべるゼロスに、

「よく分かってるじゃない。」

 微笑みながら、彼女は言った。



第0話ルナサイド目次第1話①


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