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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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あたたかな【とうらぶ/オールキャラ】

三日月宗近 他 ※恋愛要素なし

まだ審神者として本丸に来て間もない頃のお話
頑張りすぎる審神者と見守ってくれている刀剣男士たち

あたたかな



「やばい。眠い」

 このところ、鍛刀を一気に頑張りすぎたせいか、最近どうも眠くて仕方ない。
 こんなに眠いのは、独りで大掛かりな神事をやった時以来だ……

 ――あれって、もう2年位前だっけ……

 婆様がいなくなって初めての大きな仕事だった。

「これって、力使いすぎてるってことだよね」

 うーん。と伸びをして、机に向き直る。
 でも、やはり眠い。


「帰ったぞ」

 聞こえてきた、おっとりとした声。
 ああそうだ。

「おかえりー!」

 振り返れば、演練に行っていた第一部隊が揃っていた。

「どうだった?」
「主サマ、聞いて聞いて!連戦連勝してきたよ!」

 にこにこしながら、乱ちゃんが飛びついてくる。
 出遅れた五虎退ちゃんがオロオロして、虎たちがすり寄ってきた。
 愛染くんは、へへへっと笑っている。

「おー!すごいすごい」

 よしよしと乱ちゃんを撫で、愛染くんとオロオロする五虎退ちゃんを手招きして撫でる。
 顔を上げれば、そんな兄弟の姿に苦笑する前田くんと、微笑ましそうな顔の歌仙と三日月。

「それじゃ、しばらくゆっくり休憩しててね。広間にお菓子とか用意してあるよ」
「はーい!」

 短刀たちが元気に飛び出して行って、あとには歌仙と三日月が残った。

「短刀たちの引率、ありがとね。ふたりとも」
「もう少し雅な勝ち方をしたかったけれどね」
「ん?」

 走って行った短刀たちを見ながら、歌仙が肩を竦めた。

「どうかしたの?」
「短刀たちは、まだ少し不安要素が多いな」
「……そっか」

 最初にわたしの元に来た打刀の歌仙と、どうやら超レアな太刀らしい三日月。
 このふたりと比べてしまうと、どうしても短刀たちは見劣りしてしまう。

「やっぱり、まだしばらくは近場の出陣と演練で鍛えてくしかないかなぁ」

 わたしの言葉に、頷くふたり。
 之定と天下五剣に子守りみたいなことさせてるの、やっぱり罰当たりすぎるかなぁ……

「もう少し鍛刀も頑張ってみるよ。戦力的にも厳しいもんね」
「……主は、少し無理をしすぎてないかい?」
「今日は、もう休め」

 ――え?

「その目の下の隈は、風流さのかけらもないね」
「それに、目が赤いな」
「うぅ……」

 言い返せないわたしに、歌仙も三日月も笑う。

「わかりました」

 意地を張っても意味がない。
 まだ、やっと部隊を一つ組めるようになっただけの、わたしの本丸。
 先はまだまだ長いのだから、無理する意味なんてない。

「さて。俺は、短刀たちに稽古でもつけてやるかな」
「それはいいねぇ。ご一緒させていただこうか」

 そう言って出て行くふたり。

「怪我しちゃだめだし、怪我させてもだめだからね」
「あいわかった」

 三日月の振った手が見えなくなるまで見送って。
 わたしは、机の上を片づけた。

 ――ああ、なんだか……

 胸があたたかい。

「ふふふっ」

 くすぐったくてこみ上げてきた笑み。
 立ち上がり、大きく伸びをした。

「お言葉に甘えて、少しお昼寝させてもらいますか」


おわり

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