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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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この大切な日に【遙か3/弁望】

ED後
2012年の弁慶さん誕生日おめでとう小話
ED後だけど、どれのED後なのか不明

この大切な日に


 

「僕は、幸せ者ですね」
「幸せじゃなきゃ、困ります」

 
 ぽつりとこぼされた呟き。
 即座に返される言葉。
 少し怒ったように、頬を膨らませ眉根を寄せた望美の顔に、弁慶は苦笑を浮かべた。
 
「もっともっと、弁慶さんは幸せになっていいんです」

 ずっと、一人でいろいろなことを抱えてきた人。
 だからこそ――
 
「望美さん……」
「そのために私がここにいるんですから!」

 そう言って笑う望美は、あの頃と変わらない。
 年齢よりも幼く見えることもあれば、大人びて見えることもある。
 そんな彼女に惹かれていた。
 けれど、それはたどり着くはずのなかった未来――そう思っていた。

「君が――」

 そっと指に絡める長い髪。
 甘えるように寄りかかってきた望美を抱き寄せて、弁慶はその重みとぬくもりを確かめる。
 これが夢ではなく、手に入れた……願っていた未来の姿なのだ。

 「君と出会って、君の八葉に選ばれて……君が僕を追いかけてくれて、よかった」

 頬に触れた掌。
 額に触れた唇。

 望美が小さく頭を振る。

「私も……弁慶さんと出会えてよかった。」

 そっと掌を頬に触れる。
 そっと唇を額に触れる。

 「弁慶さんがいて、ちゃんと生きてて、こうやって一緒にいられてよかった。」

 間近で微笑みあえば、心に、あたたかなものが生まれてくる。

「だから、大切にしたいの」


 触れたのは唇
 慈しみを込めて……
 愛しさを込めて……
 望美から
 弁慶へと

 「弁慶さんが生まれてきた日を」

 あなたにだけ聞こえる声で囁きたい
 共に生きる命が生まれた日の言祝を
 たった一言だけれど
 
「お誕生日、おめでとう」

 

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