熱【遙か3/弁望】 2007年05月01日 遙かなる時空の中で3 0 ゲーム中・夏 熱を出して寝込んだ望美への、おしおき 熱 熊野から帰って暫くした頃、夏の暑さと熊野での疲れが出たのだろうか…私は、熱を出して寝込んでしまった。 「風邪…ですね――少し前から、体調が悪かったんじゃないんですか?」 弁慶さんに問われたけれど、ここで頷いたら、絶対に、どうして言わなかったと叱られてしまう……私は、熱のせいをいいことに、だんまりを決め込んだ。 「……きちんと栄養を取って、薬を飲めば…数日で回復します。とりあえず、しばらくは大人しくしていてくださいね。」 溜息をついた弁慶さんは、そう言って、部屋を出て行った。 けれど……… それから2日経っても、私の熱は下がらなかった。 原因は、熱のせいで身体が重くて、食べるのも面倒だったからだ。 ちゃんと食べて薬を飲むように言われていたのに…… 「せめて…薬だけでも飲んでください。起き上がるのも辛いかもしれないけれど……食事もとらない、薬も飲まない…じゃあ、治るものも治りませんよ。」 嗜めるように言われるけれど、億劫なのはどうしようもない。 起き上がるのも、喋るのも…面倒なくらい、身体が重かった。 「仕方ありませんね。」 溜息混じりに呟いた弁慶さんが、薬の入った器を手に取った。 熱で朦朧とした頭では、思考が働かない。 背中を抱えるように抱き起こされる。 …なんだろう……? とよぎった次の瞬間。 「んっ……ぅ……」 塞がれた唇。 流れ込んでくる液体 絡んでくる…柔らかい熱 息苦しさに衣の端を握り締める。 零れて首を伝う感触が、くすぐったかった。 「………っ……」 離れてゆく唇。 濡れた私の唇を拭うように、舌が這う。 硬直してしまった私の視界に入るのは、苦笑を浮かべた弁慶さんの姿。 「少し零れてしまいましたね。」 呟き、再び近づく弁慶さんの顔。 首筋を伝った薬を舐め取る舌がくすぐったくて… 「んっ……や…ッ…くすぐった…」 「――そんな声を出されてしまうと……変な気分になってきますね。」 からかいを含んだ囁き。 そんなことを言われても、私自身も、背中を駆け上がる風邪の悪寒とは違ったゾクゾクとした感覚に…どうしたらいいか分からない。 「私…ッ……そんなつもりじゃ……ッ……」 「分かっていますよ……僕だって、そんなつもりはないですからね……」 くすり…と小さく笑うのが聞こえた。 首にかかっていた吐息が離れてゆくのが分かった。 きつく閉じていた目を開くと、私の顔を覗き込む弁慶さん。 「具合の悪い君をどうこうしようだなんて…思うわけないでしょう?」 言って微笑まれ…私は、真っ赤になってしまう。 「それとも……」 単衣の肩を掴む両手。 ――え? 「あッ!」 力を込められて、そのまま私は仰向けに押し倒されてしまった。 「――本当は、こういうことでも……期待しているんですか?」 「あ……そっ…わ…っ」 突然のことに、発した声は言葉にならない。 ――絶対、熱、上がってるよ~!別の意味で… 「……………」 見つめてくる視線に、どうしたらいいか分からない。 「あ…あのっ……」 「冗談ですよ。」 可笑しそうに笑い、弁慶さんの手が離れていく。 掛布をかけられ、そっと額に掌が当てられた。 「大丈夫ですか?すみません、逆に熱を上げてしまったみたいですね…」 真っ赤になってしまった私の頬を指先が撫でる。 「ゆっくり眠って…早く元気になりましょうね。」 乱れた髪を梳くように撫でられ、穏やかな微笑みが向けられる。 「――はい……」 いろんな意味で、これ以上何も言えなかった。 「君の夢路のお伴は…元気になってから改めて申し出ることにします…おやすみなさい。」 立ち去り際の囁きと、額に触れた唇に…私の熱はまた上昇したのだった。 PR