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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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熱【遙か3/弁望】

ゲーム中・夏
熱を出して寝込んだ望美への、おしおき




 熊野から帰って暫くした頃、夏の暑さと熊野での疲れが出たのだろうか…私は、熱を出して寝込んでしまった。

「風邪…ですね――少し前から、体調が悪かったんじゃないんですか?」
 弁慶さんに問われたけれど、ここで頷いたら、絶対に、どうして言わなかったと叱られてしまう……私は、熱のせいをいいことに、だんまりを決め込んだ。
「……きちんと栄養を取って、薬を飲めば…数日で回復します。とりあえず、しばらくは大人しくしていてくださいね。」
 溜息をついた弁慶さんは、そう言って、部屋を出て行った。


 けれど………
 それから2日経っても、私の熱は下がらなかった。
 原因は、熱のせいで身体が重くて、食べるのも面倒だったからだ。
 ちゃんと食べて薬を飲むように言われていたのに……

「せめて…薬だけでも飲んでください。起き上がるのも辛いかもしれないけれど……食事もとらない、薬も飲まない…じゃあ、治るものも治りませんよ。」

 嗜めるように言われるけれど、億劫なのはどうしようもない。
 起き上がるのも、喋るのも…面倒なくらい、身体が重かった。

「仕方ありませんね。」

 溜息混じりに呟いた弁慶さんが、薬の入った器を手に取った。

 熱で朦朧とした頭では、思考が働かない。
 背中を抱えるように抱き起こされる。
 …なんだろう……?
 とよぎった次の瞬間。

「んっ……ぅ……」

 塞がれた唇。
 流れ込んでくる液体
 絡んでくる…柔らかい熱
 息苦しさに衣の端を握り締める。
 零れて首を伝う感触が、くすぐったかった。

「………っ……」

 離れてゆく唇。
 濡れた私の唇を拭うように、舌が這う。
 硬直してしまった私の視界に入るのは、苦笑を浮かべた弁慶さんの姿。

「少し零れてしまいましたね。」

 呟き、再び近づく弁慶さんの顔。
 首筋を伝った薬を舐め取る舌がくすぐったくて…

「んっ……や…ッ…くすぐった…」
「――そんな声を出されてしまうと……変な気分になってきますね。」

 からかいを含んだ囁き。
 そんなことを言われても、私自身も、背中を駆け上がる風邪の悪寒とは違ったゾクゾクとした感覚に…どうしたらいいか分からない。

「私…ッ……そんなつもりじゃ……ッ……」
「分かっていますよ……僕だって、そんなつもりはないですからね……」

 くすり…と小さく笑うのが聞こえた。

 首にかかっていた吐息が離れてゆくのが分かった。
 きつく閉じていた目を開くと、私の顔を覗き込む弁慶さん。

「具合の悪い君をどうこうしようだなんて…思うわけないでしょう?」

 言って微笑まれ…私は、真っ赤になってしまう。

「それとも……」

 単衣の肩を掴む両手。

 ――え?

「あッ!」

 力を込められて、そのまま私は仰向けに押し倒されてしまった。

「――本当は、こういうことでも……期待しているんですか?」
「あ……そっ…わ…っ」

 突然のことに、発した声は言葉にならない。

 ――絶対、熱、上がってるよ~!別の意味で…

「……………」

 見つめてくる視線に、どうしたらいいか分からない。

「あ…あのっ……」
「冗談ですよ。」

 可笑しそうに笑い、弁慶さんの手が離れていく。
 掛布をかけられ、そっと額に掌が当てられた。

「大丈夫ですか?すみません、逆に熱を上げてしまったみたいですね…」

 真っ赤になってしまった私の頬を指先が撫でる。

「ゆっくり眠って…早く元気になりましょうね。」

 乱れた髪を梳くように撫でられ、穏やかな微笑みが向けられる。

「――はい……」

 いろんな意味で、これ以上何も言えなかった。

「君の夢路のお伴は…元気になってから改めて申し出ることにします…おやすみなさい。」

 立ち去り際の囁きと、額に触れた唇に…私の熱はまた上昇したのだった。

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