忍者ブログ

よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

雪景色【遙か3/弁望】

十六夜ED後 現代
雪を見て思い出すのは…シリアス→甘


雪景色




「あ……雪………」

「静かだと思ったら、降り出していたんですね。」

 

 ふと窓に目を向けると、外は深々と雪が降っていた。

 望美は、立ち上がって窓際に行くと…音もなく降り積もる雪を、じっと見つめた。

 

「雪は…」

「望美さん?」

 

 突然、小さな声で呟いた望美に、弁慶は訝しげに振り返った。

 

 

「私…雪は嫌いです。」

 

 シャッ…と音を立てて閉じられるカーテン。

 

「え?」

 

 望美の言葉に、弁慶は首を傾げた。

 こことは違う世界で、雪の降った日に楽しそうにしていた姿を思い出す。

 

「だって……」

 

 軽い足音。

 突然、弁慶の胸元に飛び込んできた望美が、強く抱きついた。

 

「雪は、私から弁慶さんを奪うから……」

 

 

 

 ああ…と思い出した。

 まだ、あれから…それほど時間は経っていない。

 雪降り積もる平泉で…この少女と再会をしてからは……

 

 

「それは、上書きされる前の運命でしょう?」

「でも……」

 

 見上げてきたのは、泣きそうな瞳。

 弁慶は、そっと、望美の髪を撫でた。

 

「僕は君のおかげで、ここにいる。」

 

 一度は元の世界に帰したはずの天女が、自分と追っ手との間に立ちはだかったことを思い出す。

 

 

 

「僕にとって雪は…再び君と出会わせてくれた恩人です。」

 

 望美の頬を両手で包み込み、弁慶は微笑みかける。

 泣きそうだった瞳が、不安に揺れる。

 

「どこにも行ったりしないですよね?」

「行きませんよ。」

「私を置いていったりしませんよね?」

「ずっと、君と一緒にいます。」

「本当ですよね?嘘じゃないですよね。」

「もう、君に嘘はつきません。」

「約束ですよ。」

「ええ。約束です。」

 

 

 交わした約束。

 言葉にしないと不安になるから…

 

 

 

 

 

 やっと、望美の顔に微笑みが戻った。

 そっと触れあう唇。

 互いの温もりを確かめ合うように……

 溢れる愛しさを伝え合うように……


拍手

PR