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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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聖なる夜~あなたと刻む永遠~【遙か1/鷹あか】

夢小説(名前変更あり)で公開していた作品です
もったいないんで、名前固定(あかね)でこちらにも…

聖なる夜~サンクチュアリ~」の鷹通サイド
聖なる夜~あなたと刻む永遠~



 約束の時間よりも、少し早く着いてしまった待ち合わせ場所。
 見上げた空には、アプリコット色に染まり始めた雲が重なっていた。
 今日は12月22日。
 昨晩、突然の電話で呼び出された。
 今日の夜。一緒に過ごしたい……と。

 まだ、慣れない…この世界での生活。
 けれど、クリスマスという行事は数日後だというくらいは知っている。
 ここではない別の国で、生まれた行事。
 この国では、冬の催し物として、本来とは別の楽しまれ方がされているらしい。

 けれど、今日は12月22日。
「クリスマスイブ」というのは、24日だったはずだ。

 ――一体…何だというのだろう?

 光り輝く電飾に彩られた街並み。
 この季節は、これが普通なのだと言われたが…
 夜がこれほど明るいことは、この世界に来て驚いた。
 空の星も見えないほど、地上には星が輝いている。

 共に過ごした、京での日々。
 全てが終わってからも……離れたくないと願ってしまった。
 冬の聖なる夜に、神へ祈りを捧げるのならば……祈りを捧げるべき神は、二人を出会わせ、我が儘とも言える願いを叶えてくれた白い龍神だろう。

「遅いな……」
 待ち合わせ場所にある時計。
 誰もが時を刻むものを見ることができる…最初はそれが不思議だった。
 けれど…慣れると、それは便利なのだと分かった。
 待ち合わせの時間まで、あと5分をきっていた。
 いつもならば、息を切らせて駆けてくる姿が……今日は、まだ見えない。
 いつの間にか…夜の色に染まり始める…風景。
 地上の光が、賑やかに映える時間。
 さすがに、少し不安になってくる。
 携帯電話に手を伸ばし、最近ようやく耳に慣れ始めた呼び出し音を聞く。
 延々と流れる、無機質な音。
 切り替わり…繋がった先は、留守番電話。
 時計は……待ち合わせ時間を指していた。
「……ッ……」
 呼び出し音が続く。
 二度…三度……
 何度掛けても、待ち望んだ声が聞こえない。

 ――本当に、一体…どうしたというのだろう……

 不安に押しつぶされそうになりながら、時計と携帯電話と、ここへ繋がる道へと視線を向ける。
 待ち合わせ時間を10分過ぎた頃。
「ご、ごめんなさいッ!」
 息を切らせ、駆け寄ってくる待ち望んだ姿。
「ッ!」
 駆け寄ってくる間さえもどかしく…考えるより先に走りだす。
「心配……しました……」
 目の前で立ち止まった少女を、強く、腕の中に抱きこむ。
「何かあったのかと……」
「ごめんなさい。」
 すまなさそうに、まだ整わぬ息で告げるのは、謝罪の言葉。
 そんな言葉よりも…ようやく、声が聞けたことが嬉しかった。

「いいえ。あなたが無事で、よかった……」
「あ…あの……鷹通さん……」
 ぎゅっと抱きしめられて、あかねは身じろぎした。
 待ち合わせ場所は、公園の噴水。
 つまり……冬とはいえ、人目の多い場所だ。
 最初は、辿りつけたことに安堵して忘れていたが…
 我に返ってみると、人前で抱き合っていることは…かなり恥ずかしい。
「……あ……申し訳ありません!」
 はっとして、鷹通は慌てて、あかねを解放する。
 そんな様子に、相変わらず真面目な人だ…頭の片隅で思いながら、あかねは顔を見上げた。
「遅くなってしまって…心配かけて……本当にごめんなさい。」
 一歩後ろに下がって、あかねは正面から鷹通を見上げる。
「これを探していたら……遅くなってしまったんです。」
 言いながら、大事に胸に抱えていた包みを差し出した。
 不思議そうに首を傾げる鷹通。
「これ……は?」
「鷹通さん。お誕生日、おめでとうございます。」
 微笑み、告げる祝福の言葉。
「え…?」
「今日、鷹通さんのお誕生日でしょ?」
 微笑みながらの問いかけに、鷹通は戸惑いながら頷く。
「だから……」
 言って触れてきたあかねの手に、胸の奥にこみ上げてくる、どうしようもないほどの愛しさ。
「これを……私に?」
「はい。」
 少し冷えた手から、小さな包みを受け取る。
「開けてみてもいいですか?」
「もちろんです。」
 嬉しそうに頷くあかね。

「これ……は……」
 たった一度だけ目にした覚えのある…懐中時計。
「前に、いいなって言ってたから…」

 覚えていてくれたことが嬉しかった。
 探してまで贈ってくれたことが嬉しかった。
 何より……自分の生まれた日を、祝福してくれることが……一番嬉しかった。

「この時計が……これからも私たちの時間を刻んでくれたらいいな…って思って……」
 告げられた言葉に、溢れんばかりの愛しさが込み上げてきて……
「あっ!」
 再び腕の中へと抱き込んでしまう。
「ありがとう……ございます。」



「今日は、私にとっての聖夜なんです。
 クリスマスより、ずっと……大切な日なんです。」
 光溢れる街の中。
 地に降りた光と、天から降り注ぐ光に照らされて……
 囁くように告げられた言葉は……重なった唇に……奪われ、溶けていった。


END

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