聖なる夜~あなたと刻む永遠~【遙か1/鷹あか】 2006年12月16日 遙かなる時空の中でシリーズ 0 夢小説(名前変更あり)で公開していた作品です もったいないんで、名前固定(あかね)でこちらにも… 「聖なる夜~サンクチュアリ~」の鷹通サイド 聖なる夜~あなたと刻む永遠~ 約束の時間よりも、少し早く着いてしまった待ち合わせ場所。 見上げた空には、アプリコット色に染まり始めた雲が重なっていた。 今日は12月22日。 昨晩、突然の電話で呼び出された。 今日の夜。一緒に過ごしたい……と。 まだ、慣れない…この世界での生活。 けれど、クリスマスという行事は数日後だというくらいは知っている。 ここではない別の国で、生まれた行事。 この国では、冬の催し物として、本来とは別の楽しまれ方がされているらしい。 けれど、今日は12月22日。 「クリスマスイブ」というのは、24日だったはずだ。 ――一体…何だというのだろう? 光り輝く電飾に彩られた街並み。 この季節は、これが普通なのだと言われたが… 夜がこれほど明るいことは、この世界に来て驚いた。 空の星も見えないほど、地上には星が輝いている。 共に過ごした、京での日々。 全てが終わってからも……離れたくないと願ってしまった。 冬の聖なる夜に、神へ祈りを捧げるのならば……祈りを捧げるべき神は、二人を出会わせ、我が儘とも言える願いを叶えてくれた白い龍神だろう。 「遅いな……」 待ち合わせ場所にある時計。 誰もが時を刻むものを見ることができる…最初はそれが不思議だった。 けれど…慣れると、それは便利なのだと分かった。 待ち合わせの時間まで、あと5分をきっていた。 いつもならば、息を切らせて駆けてくる姿が……今日は、まだ見えない。 いつの間にか…夜の色に染まり始める…風景。 地上の光が、賑やかに映える時間。 さすがに、少し不安になってくる。 携帯電話に手を伸ばし、最近ようやく耳に慣れ始めた呼び出し音を聞く。 延々と流れる、無機質な音。 切り替わり…繋がった先は、留守番電話。 時計は……待ち合わせ時間を指していた。 「……ッ……」 呼び出し音が続く。 二度…三度…… 何度掛けても、待ち望んだ声が聞こえない。 ――本当に、一体…どうしたというのだろう…… 不安に押しつぶされそうになりながら、時計と携帯電話と、ここへ繋がる道へと視線を向ける。 待ち合わせ時間を10分過ぎた頃。 「ご、ごめんなさいッ!」 息を切らせ、駆け寄ってくる待ち望んだ姿。 「ッ!」 駆け寄ってくる間さえもどかしく…考えるより先に走りだす。 「心配……しました……」 目の前で立ち止まった少女を、強く、腕の中に抱きこむ。 「何かあったのかと……」 「ごめんなさい。」 すまなさそうに、まだ整わぬ息で告げるのは、謝罪の言葉。 そんな言葉よりも…ようやく、声が聞けたことが嬉しかった。 「いいえ。あなたが無事で、よかった……」 「あ…あの……鷹通さん……」 ぎゅっと抱きしめられて、あかねは身じろぎした。 待ち合わせ場所は、公園の噴水。 つまり……冬とはいえ、人目の多い場所だ。 最初は、辿りつけたことに安堵して忘れていたが… 我に返ってみると、人前で抱き合っていることは…かなり恥ずかしい。 「……あ……申し訳ありません!」 はっとして、鷹通は慌てて、あかねを解放する。 そんな様子に、相変わらず真面目な人だ…頭の片隅で思いながら、あかねは顔を見上げた。 「遅くなってしまって…心配かけて……本当にごめんなさい。」 一歩後ろに下がって、あかねは正面から鷹通を見上げる。 「これを探していたら……遅くなってしまったんです。」 言いながら、大事に胸に抱えていた包みを差し出した。 不思議そうに首を傾げる鷹通。 「これ……は?」 「鷹通さん。お誕生日、おめでとうございます。」 微笑み、告げる祝福の言葉。 「え…?」 「今日、鷹通さんのお誕生日でしょ?」 微笑みながらの問いかけに、鷹通は戸惑いながら頷く。 「だから……」 言って触れてきたあかねの手に、胸の奥にこみ上げてくる、どうしようもないほどの愛しさ。 「これを……私に?」 「はい。」 少し冷えた手から、小さな包みを受け取る。 「開けてみてもいいですか?」 「もちろんです。」 嬉しそうに頷くあかね。 「これ……は……」 たった一度だけ目にした覚えのある…懐中時計。 「前に、いいなって言ってたから…」 覚えていてくれたことが嬉しかった。 探してまで贈ってくれたことが嬉しかった。 何より……自分の生まれた日を、祝福してくれることが……一番嬉しかった。 「この時計が……これからも私たちの時間を刻んでくれたらいいな…って思って……」 告げられた言葉に、溢れんばかりの愛しさが込み上げてきて…… 「あっ!」 再び腕の中へと抱き込んでしまう。 「ありがとう……ございます。」 「今日は、私にとっての聖夜なんです。 クリスマスより、ずっと……大切な日なんです。」 光溢れる街の中。 地に降りた光と、天から降り注ぐ光に照らされて…… 囁くように告げられた言葉は……重なった唇に……奪われ、溶けていった。 END PR