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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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光の輪舞【遙か1/鷹あか】

京ED後
誕生日を祝いたい神子の、ちょっとした思いつき
光の輪舞



 風の冷たさが、冬を告げていた。

 降り始めた雪は朝には積もっていて……あかねはふと、元いた世界のことを思い出した。

「そろそろ、クリスマスなんだよね……」

 不意に思い出したのは、街を彩るイルミネーション。

 学校帰りに、夜を明るく演出していた輝き。

 友達と、彼氏ができたら絶対行きたい…そんな風に話していたのも、遠い昔のように感じる。

 

「さすがに、こっちじゃありえないもんね…」

 

 溜息をついて、雪の積もった庭を眺める。

 夜には、闇が訪れる。

 あの世界の夜が、どれほど明るく「作られて」いたか、思い知らされた。

 けれど――

 

「………………そうだっ!」

 

 思いついて立ち上がると、あかねは藤姫の部屋へと大急ぎで向かって行った。

 

 

 

 

 

 あかねから届いた一通の文。

 たどたどしい文字で記されていたのは、「二十二日の夜に来て欲しい」…という言葉だけ。

 時折、この異世界から降り立った少女は、信じられないようなことをするから……

 鷹通は、このあかねからの誘いを、心待ちにしていた。

 

 

 

 冬の至りの日。

 鷹通は、あかねからの誘い通り、夜を待って藤姫の館を訪れた。

 

 にこにこと、どこか含みのある女房の案内。

 途中、迎えに出た藤姫も、何やら楽しそうな笑顔を浮かべていた。

 首を傾げる鷹通が案内されたのは、あかねの部屋ではなく…その前の庭。

 

「あちらでお待ちです。」

 そう告げて、そそくさと立ち去る女房。

 藤姫も無邪気に微笑みながら、

「ごゆっくりなさってくださいませね。」

 その場を後にした。

 

 訝しげに思いながらも、庭に下りて示された場所へと歩を進める。

 木々の枝葉に隠された、その場所へと向かうと……

 そこだけは、夜とは思えない輝きに満ちていた。

「これは一体……」

 輝きの中央には、嬉しそうに佇むあかねの姿。

 

「鷹通さん…お誕生日おめでとう。」

 

 微笑み告げられた言葉に、あかねの可愛らしい企みに気付く。

 以前、教えられた彼女の世界……生まれた日を祝う風習。

 そして、冬の日に街を彩るという光の飾りの話。

 

「……ありがとうございます。」

 他に唇に乗せる言葉も思いつかず…

 鷹通は、そっとあかねを抱きしめた。

 

 薄らと積もる白い雪の中、枝や庭石に置かれた蝋燭の、揺らめく仄かな灯火が…二人を静かに包んでいた。

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