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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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夢見騒がし3 弁慶編【夢浮橋/弁望前提】

夢浮橋捏造・弁慶編

頭では分かっていても、心が納得しない。
不貞腐れる望美に弁慶は…

夢見騒がし3 弁慶編



 ――それでもやっぱり……
 
 傍らの石に腰掛けて、望美は頬を膨らませていた。
 
 弁慶が優しいのは知ってる。
 けれど…自分以外の女の子――神子たちに微笑みを向けて欲しくなかった。
 優しくして欲しくなかった。
 楽しげに話して欲しくなかった。
  それは勝手な言い分なのは分かっている。
 単なる嫉妬だということも分かっている。
 それでも……

 ――私、こんなに嫌な子だったっけ……
 
 はぁ…と深くため息をついて、望美は視線を落とした。
 
 

「こんなところにいたんですね。」

 聞こえてきた声で、すぐに誰だか分かったけれど…
 望美は、隣に腰掛けてきた彼に背を向けるように、体の向きを変えた。

「おや?怒らせてしまったかな?」

 面白がるような声。
 こんな風に言われるなら、絶対振り向いてやるものか…と意固地になって望美は頬を膨らませた。

 ――困った人だ…
 
 胸の内でため息をついて、弁慶は望美の肩を抱き寄せた。
 びくっ、と肩を跳ねさせて、望美が身を硬くする。

「それともヤキモチを焼いてくれたのかな?」
「なっ!違います!」

 耳元で囁かれて、望美は思わず振り返った。
 振り返ってしまってから、しまった…と後悔する。
 弁慶の目が、楽しそうに…自分を見ていたからだ。
 嵌められた…と不機嫌に睨みつける望美。
 弁慶は、ふ…と瞳を和らげた。
 
 ――え?

 ふいに向けられた優しげな眼差しに、とくん…と胸が高鳴って、望美は瞳を離せなくなってしまう。
 そんな望美へと、微苦笑を浮かべた唇が告げる。

「僕は妬いてましたよ。」
「え?」

 想像もしていなかった言葉に、望美は目を瞬かせる。
 弁慶が、誰にヤキモチを焼くと言うのだろう。
 そんな疑問が望美の頭の中に渦巻いているのがお見通しのように…弁慶が微笑んだ。

「君が他の神子の八葉たちと楽しげに話しているのを見て…ね。」

 3倍に増えた八葉。
 それだけでも心配は3倍。
 それなのに、望美は…そんな弁慶の心配をよそに、他の神子たちの八葉と楽しそうに話す。
 いつの間にか、仲良くなってゆく。
 偶然話す機会のあった神子二人ですら、そんな望美に好意を抱いていた。


「だから、君もヤキモチを焼いてくれて、僕は嬉しいんですよ。

 僕だけが君を想っていたわけじゃない…と分かって嬉しい。」

「弁慶さんのバカっ!」

 自分だけが、子供の我が儘のような事を考えていると思っていた。
 違うと分かって嬉しかったけれど……悔しかった。

「望美さん…」

 すぐ傍で弁慶が微笑んでいる。
 肩を抱いていた手が、するり…と背中へと回った。

「弁慶…さん」

 慰めるように重なる唇。
 優しく、髪を梳く指。
 慈しむような抱擁。
 
 どことも知れぬ場所で…
 たくさんの仲間たちの中で…
 それでも――
 この大切な人だけは、変わらぬまま…微笑んでいてくれればいい。

 

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