あわゆき【雅恋/和彩】 2012年11月13日 雅恋~MIYAKO~ 0 「あわゆきのうたげ」エンド後 捏造 夢と現の狭間のような宴のあと 揺れる船の上。心も、過ぎる不安に揺らいで…… あわゆき ゆらゆらと船が揺れる はらはらと桜の花びらが舞う そして 舞い落ちてくる儚い雪 とくんとくんと速い鼓動は、どちらのものだろう。 重なり合う唇から、吐息が混じり合う。 冷たい筈の夜風も気にならないほどに、身体も心もあたたかい 寄り添い、確かめ合う想い。 んっ……と小さく漏れた声。 名残を惜しむように、唇はゆっくりと離れてゆく。 どうしてだろう。 この宴の前は、こんな風に想いもしなかった。 あの貝の記憶のせいだろうか? 彩雪は、自分の心に戸惑う。 「どうしたの?」 甘い声が囁く。 もう、離れたくないと思った。 溢れて止まらない記憶を辿るかのように、彩雪は和泉へと抱きつく。 この人への想いを知った記憶。 それは、現実か夢か…… そっと頭に重さを感じた。 そのまま、ぽんぽんと触れたそれは、和泉の手。 優しく彩雪の髪に触れ、何度も何度も梳いてゆく。 「俺は、どこにも行ったりしないよ」 抱きしめて、宥めるように囁く声。 「ずっと、キミのそばにいる」 うん、うん、と彩雪は何度も頷いた。 傍にいてくれるという幸せ。 けれど、もどかしさがあった。 貝に見せられるまで、自分の心に、この想いは存在していなかったのではないか?という不安。 和泉は、出逢ったあの日から、彩雪を想い続けてくれていたという。 だけど、自分は…… 人ではない曖昧な存在。 夢現の曖昧な記憶。 何が真実だと言うのか。 朝になれば、今宵のことなどすべてただの夢と儚く消えてしまって…… 自分はやっぱりただの式神で、この人とは遠く隔たれたまま――今まで通り、ただの "仲間" のままなのではないか。 否。 それ以前に。 この胸にある想いすら、ただの幻なのかも…… 「和泉……」 縋りつく彩雪に、和泉は訝しげに動きを止めた。 「どうかした?」 問うても答えない彩雪。 「こっちを向いて?」 促せば、おずおずと彩雪は顔を上げた。 そこに浮かぶ不安げな色に、和泉の心が騒ぐ。 「どうしてそんな顔してるの?」 「……わたし……」 和泉の問いに、口ごもる彩雪。 「ちゃんと言って?」 優しい、和泉の声と微笑み。 「これは……本当のこと、だよね?」 「え?」 「これも、貝の記憶だったり……夢だったりしないよね?」 「彩雪……」 不安に揺れる彩雪の瞳。 和泉は、安心させるように微笑んだ。 「大丈夫。全部終わって、新しく始まったんだ。 これは……本当のことだよ。 キミが俺を選んでくれた。俺との貝の記憶を集めて……今があるんだよ」 こんな風に不安にさせてしまっているのも、全部自分のせいだと、和泉は思った。 この宴を開かなければ、得られなかったけれど。 この宴のせいで、この愛しい少女を不安にさせてしまった。 けれど。 宴は終わったのだ。 すべて。自分の願う結果で。 「だから、もう。不安になんてならなくていいんだ」 和泉は、そう告げた。 この言葉が伝わってくれればいい。 そう願いながら。 「じゃあ、朝になっても……ッ!」 まだ不安そうな彩雪の言葉を遮って、和泉は、そっと唇を塞いだ。 「んっ……」 「……朝になっても、キミは俺の后だよ」 「あ……」 「これからも、ずーっと、キミは俺のただ一人の愛しい舞姫だからね」 ゆらゆらと船が揺れる はらはらと桜の花びらが舞う そして 舞い落ちてくる儚い雪 寄り添い、互いの体温を間近で感じながら、見上げる金色の月 これからもずっと、共に…… 交わした微笑み 交わした約束 交わした……口付け PR