おねがい【雅恋/和彩】 2012年11月12日 雅恋~MIYAKO~ 0 本編中 捏造 これから三種の神器を取り戻しに行くという時 彩雪に「おねがいがある」と告げた和泉は…… おねがい 「急いで片付けちゃわないとね」 皆でご飯を食べて、これからのことを話し合って、仕事寮がどう動くのか決まったあとのこと。 わたしは、ひとりで後片付けをしていた。 皆、それぞれに身体を休めているだろう。 頼子ちゃんは、さっき、軽い食事を持って行った時には眠っていたみたいだったから、部屋に置いてきた。 「うん。きっと、大丈夫だよね」 時間がくれば、わたしたちは、二手に分かれて動くことになる。 わたしは、和泉と一緒に行く ――絶対。和泉のことは、わたしが守るよ そう心に誓いながら、わたしは洗い物をしていた。 「片付け、全部任せちゃって、悪いね」 「えっ!?」 不意に声を掛けられて、わたしは驚いて振り返った。 「和泉!」 いつのまに来たのだろう。 わたしのすぐ後ろに、和泉の姿があった。 「和泉、休んでなくていいの?」 あんなに辛そうな顔してたのに。 時間があるなら、少しでも身体を休めていて欲しいのに。 どうして……? 「大丈夫だよ。式神ちゃんの作ってくれたご飯が美味しかったから、元気になったんだよ」 「……和泉」 「お世辞じゃなく、ほんとおいしかったんだ。あーぁ、俺も、毎日キミの手料理が食べたいなぁ」 冷めた料理じゃなくてね。なんて、おどけて言う和泉だけれど、わたしは洗い物の手を止めて向き合った。 「そうじゃないよ。美味しいって言ってくれるのは、すごく嬉しいけど……和泉、全然寝てないでしょ?少しでも休んでおかないと……」 「式神ちゃん」 ふわりと頭に乗せられた手のひら。 優しく、和泉がわたしの頭を撫でる。 「キミは優しい子だね。だけど、ほんとに大丈夫だから、安心しておくれ」 「……ほんとに?」 「ああ」 じっと、わたしは和泉を見つめた。 確かに。 織神を飛ばした時に比べると、顔色もよくなってる。 その表情に疲れも滲んでないけど…… ううん。 和泉は隠すの上手いもの、そんな簡単には信じられないよ。 「ねぇ、式神ちゃん」 そんなわたしの思考を割って、和泉がわたしを呼んだ。 「え?なに、和泉」 驚いて目を瞬かせるわたし。 和泉が、わたしの目の前で微笑んでいた。 「キミに、おねがいがあるんだ」 「わたしに?」 一体、なんだろう。 首を傾げたわたしを見つめる和泉の瞳は、とても真剣で…… わたしは、思わず姿勢を正してしまう。 「……キミに、全部を見届けて欲しい」 全部…… それは、もしかして? 「ライコウさんとのこと?」 わたしが口にした名前に、和泉が頷く。 その瞳には、決断をした強い光が宿っていた。 「俺の傍で、俺の決断を、全部見届けて欲しいんだ。キミに――」 「わたしでいいの?」 「キミがいいんだ」 そんな風に言ってもらえて、嬉しいと思った。 それが、わたしにしかできないことなら。 そして、和泉が、それを願うなら。 「うん。わかったよ」 頷いて微笑んで見せれば、綻ぶ和泉の表情。 「ありがとう」 「和泉、頑張ってね」 たくさん傷ついて、たくさん悩んで、たくさん落ち込んで…… その結果、辿り着いた答えなら。 わたしは、ちゃんと見届けるよ。和泉。 「ちゃんと、傍で……見届けるよ」 「あぁ」 こつんと触れた額から、伝わってくるぬくもり。 とくんとくんと、少し早く脈打つ鼓動。 すぐ傍で、嬉しそうに笑みを浮かべる和泉に、わたしは、心の底からほっとしながら微笑み返した。 PR