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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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おねがい【雅恋/和彩】

本編中 捏造
これから三種の神器を取り戻しに行くという時
彩雪に「おねがいがある」と告げた和泉は……


おねがい


 

「急いで片付けちゃわないとね」

 

 皆でご飯を食べて、これからのことを話し合って、仕事寮がどう動くのか決まったあとのこと。

 わたしは、ひとりで後片付けをしていた。

 皆、それぞれに身体を休めているだろう。

 頼子ちゃんは、さっき、軽い食事を持って行った時には眠っていたみたいだったから、部屋に置いてきた。

 

「うん。きっと、大丈夫だよね」

 

 時間がくれば、わたしたちは、二手に分かれて動くことになる。

 わたしは、和泉と一緒に行く

 

 ――絶対。和泉のことは、わたしが守るよ

 

 そう心に誓いながら、わたしは洗い物をしていた。

 

 

 

「片付け、全部任せちゃって、悪いね」

「えっ!?」

 

 不意に声を掛けられて、わたしは驚いて振り返った。

 

「和泉!」

 

 いつのまに来たのだろう。

 わたしのすぐ後ろに、和泉の姿があった。

 

「和泉、休んでなくていいの?」

 

 あんなに辛そうな顔してたのに。

 時間があるなら、少しでも身体を休めていて欲しいのに。

 どうして……?

 

「大丈夫だよ。式神ちゃんの作ってくれたご飯が美味しかったから、元気になったんだよ」

「……和泉」

「お世辞じゃなく、ほんとおいしかったんだ。あーぁ、俺も、毎日キミの手料理が食べたいなぁ」

 

 冷めた料理じゃなくてね。なんて、おどけて言う和泉だけれど、わたしは洗い物の手を止めて向き合った。

 

「そうじゃないよ。美味しいって言ってくれるのは、すごく嬉しいけど……和泉、全然寝てないでしょ?少しでも休んでおかないと……」

「式神ちゃん」

 

 ふわりと頭に乗せられた手のひら。

 優しく、和泉がわたしの頭を撫でる。

 

「キミは優しい子だね。だけど、ほんとに大丈夫だから、安心しておくれ」

「……ほんとに?」

「ああ」

 

 じっと、わたしは和泉を見つめた。

 確かに。

 織神を飛ばした時に比べると、顔色もよくなってる。

 その表情に疲れも滲んでないけど……

 ううん。

 和泉は隠すの上手いもの、そんな簡単には信じられないよ。

 

 

「ねぇ、式神ちゃん」

 

 そんなわたしの思考を割って、和泉がわたしを呼んだ。

 

「え?なに、和泉」

 

 驚いて目を瞬かせるわたし。

 和泉が、わたしの目の前で微笑んでいた。

 

「キミに、おねがいがあるんだ」

「わたしに?」

 

 一体、なんだろう。

 首を傾げたわたしを見つめる和泉の瞳は、とても真剣で……

 わたしは、思わず姿勢を正してしまう。

 

「……キミに、全部を見届けて欲しい」

 

 全部……

 それは、もしかして?

 

「ライコウさんとのこと?」

 

 わたしが口にした名前に、和泉が頷く。

 その瞳には、決断をした強い光が宿っていた。

 

「俺の傍で、俺の決断を、全部見届けて欲しいんだ。キミに――」

「わたしでいいの?」

「キミがいいんだ」

 

 そんな風に言ってもらえて、嬉しいと思った。

 それが、わたしにしかできないことなら。

 そして、和泉が、それを願うなら。

 

「うん。わかったよ」

 

 頷いて微笑んで見せれば、綻ぶ和泉の表情。

 

「ありがとう」

「和泉、頑張ってね」

 

 たくさん傷ついて、たくさん悩んで、たくさん落ち込んで……

 その結果、辿り着いた答えなら。

 わたしは、ちゃんと見届けるよ。和泉。

 

「ちゃんと、傍で……見届けるよ」

「あぁ」

 

 こつんと触れた額から、伝わってくるぬくもり。

 とくんとくんと、少し早く脈打つ鼓動。

 すぐ傍で、嬉しそうに笑みを浮かべる和泉に、わたしは、心の底からほっとしながら微笑み返した。

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