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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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恋香【雅恋/和彩】

本編中(?)
二人で話をしている最中、彩雪の香に気付いた頼子
香の贈り主を問い詰めてくる頼子に、彩雪は……

※オフライン活動で発行している本と同タイトルですが別物です

触れた指に


 

「あら?」

「どうしたの?頼子ちゃん。」

 

 ちょこんと首を傾げた頼子ちゃんが、じっとわたしを見つめてくる。

 

「とてもよい香りですね、参号さん。」

「え?」

 

 一瞬、言われたことの意味が分からなくて首を傾げたけれど、わたしは、ふとそれに思い当たった。

 

「あ。もしかして、お香の?」

「ええ、そうですわ。参号さんらしい素敵な香りですね。」

「ありがとう。」

 

 なんだか嬉しくなって、わたしは微笑んだ。

 和泉がわたしのために合わせてくれた香。

 それを、わたしらしい香りだと言ってもらえたのが嬉しかった。

 

「どのように合わせられたのか、今度、教えてくださいね?」

「え?えっと、あ、あの……」

 

 頼子ちゃんの言葉に、わたしは慌てる。

 自分で合わせたものじゃないから、教えるも何も……

 

「参号さん?」

「ごめんね。もらったものだから、その……」

「まあ、そうでしたの?」

 

 わたしの答えに、きらきらと、それはそれは楽しそうに、頼子ちゃんの瞳が輝いた。

 あれ?もしかしてわたし、余計なこと言っちゃった?

 

「どなたから、いただかれたんですか?」

「え!?そ、それは……」

 

 ずい、と頼子ちゃんが近づいてくる。

 

「こんなに、参号さんに似合う香ですもの。

 その方はきっと、参号さんのこと特別に想ってらっしゃるのですわ!」

 

 頼子ちゃんの勢いに気押されてしまうわたし。

 ……って、特別!?

 

「な、ないない。そんなこと、ないって。」

 そんなことありえるはずがない。

 だって、和泉は……

 つきん、と突然胸が痛くなった。

 どうしちゃったんだろう、わたし。

 

 

「あれ?ふたりとも、どうしたの。こんなところで。」

「い、いずみ!?」

 

 突然掛けられた声に、わたしは、飛び上がらんばかりに驚いた。

 

「まぁ、和泉様。」

「あんまり遅くならないように帰るんだよ?そうじゃないと、ライコウが、すっごく心配するからね。」

 

「そうですわね。ふふっ。」

 

 頼子ちゃんの追及が止んで、わたしは、ほっと胸を撫で下ろした。

 けれど……

 

「それで。楽しそうだったけど、何の話してたんだい?」

 

 できれば、それは聞かないで欲しかった。

 そう思いながら、わたしはさりげなく頼子ちゃんから距離を取る。

 

「参号さんの香の話をしていたんですの。」

「式神ちゃんの?」

 

 ちらり、と和泉がわたしを見る。

 どきん、とわたしの鼓動が騒ぎ出した。

 

「ええ。とても参号さんらしい素敵な香りですもの。」

「そっか。そう言ってもらえると、俺も嬉しいなぁ。」

「ッ!!」

 

 い、和泉っ!?

 慌ててしまうわたし。

 

「え?」

 

 案の定。

 首を傾げて、頼子ちゃんが和泉とわたしを交互に見る。

 

「どうして、和泉様が……?」

「だって……」

「和泉!な、何か用があったんじゃないの?」

 

 わたしは、慌てて間に割って入った。

 けれど――

 

「もしかして……」

 

 ぱあぁっと表情を輝かせて、頼子ちゃんがわたしを振り返る。

 

「贈り主の方って、和泉様でしたの?」

 

 頬が熱くなった。

 そんな私を見て、和泉は、とても満足そうに笑っている。

 そして、頼子ちゃんは――

 

「そういうことでしたのね。」

 

 何やら納得して、頼子ちゃんは和泉と向き合った。

 

「そういうこと。だったんだよ。」

 

 えっ?そういうことって、なに?

 

 

 置いてけぼりのわたし

 楽しそうな頼子ちゃん

 何だか嬉しそうな和泉

 

 

「それなら、いつまでも参号さんを、わたくしが一人占めしていては、いけませんわね。」

「頼子ちゃんなら構わないよ。」

 

 

 

 そのまま、わたしの分からない話を始めてしまった、和泉と頼子ちゃん。

 なんだか仲間外れにされた気がして、ちょっと寂しくなったのだけれど……

 さっきから、二人が言っている『応援』って、一体、何のことなんだろう?

 

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