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火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場
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「えっ!?」
突然、細長い何かをわたしの口元に差し出してきた和泉。
驚いて目をぱちくりさせていると、にっこりと笑いながら、和泉はまた、あーんと言った。
――え、えっと……
この細長いものは、一体何だろう。
和泉と細長いそれを交互に見るわたし。
「どうしたの?……あぁ、これかい」
和泉の問いかけに、わたしは、うんうんと頷いた。
「変なものじゃないよ、ただのお菓子だから」
――お菓子?
「ほら、あーん」
楽しそうな和泉の顔。
逃げようがなくて、仕方なくわたしは口を開けた。
その細長い菓子を、和泉はわたしの口の中へと差し入れる。
そして……
「あ、まだ食べちゃダメだからね」
え?
わけがわからず、口を開けたままのわたしは和泉の顔を見た。
「あ、口は閉じてもいいよ」
言われるまま口を閉じる。
唇と口の中に、仄かに甘い風味が溶けて広がる。
「そう。そのままくわえててね」
返事できないままで、わたしは和泉を見つめる。
そうして、すっと顔を近づけてくる和泉。
えぇっ!!
びくりと肩を震わせた私に、和泉は、にっこりと微笑んだ。
「動いちゃダメだよ」
そう告げた和泉の唇が、わたしがくわえたままの細長いそれの反対側の端を挟んだ。
――な、な、な……
わたしをじっと見つめながら、和泉は端から菓子を食べ始める。
少しずつ近づいてくる和泉に、わたしは身動きとれないままで、それを見つめていた。
――い、和泉?
顔が熱い。
――ど、どうしよう……
和泉の息を感じて、ふるりと身体が震えた。
――あっ!
その時。
間近まで迫っていた和泉とわたしとの間で、細長いそれがポキリと折れてしまう。
「…………」
「……あ~あ、残念」
悔しげに和泉が呟く。
「え、あ……ごめん」
「キミのせいじゃないよ」
そう言って、和泉が笑った。
「それじゃ、今度はキミの番だよ」
「えっ?」
はい、と菓子を渡されて、わたしは戸惑う。
けれど、期待した顔で待つ和泉には、勝てなかった。
「あ、うん……」
「反対側から食べて、途中で折れちゃったら負けだよ」
和泉の説明を受けて、今度は、わたしが和泉の口元へと菓子を近づける。
菓子をくわえてわたしを待つ和泉。
――うぅ……
よく考えてみなくても、かなり恥ずかしい。
でも、和泉の目が、早くとわたしを急かす。
えぇい!
目を閉じたまま、わたしは、さっき和泉がやったみたいに反対側の端から食べ始める。
菓子は、サクサクして甘くて美味しいけど、それどころではない。
必死にかじって……わたしはふと、それに思い当たった。
――折れたら負けって言ってたけど、折れなかったら?
菓子の反対側は和泉がくわえている。
それはつまり……
そこにあるのは、和泉の………
――っ!?
はっとして、わたしは目を開いた。
そして、そのまま硬直してしまう。
和泉の顔は思った以上に近いところにあって、わたしのことをじっと見つめていた。
ドキドキと胸が激しく鳴り響く。
わたしは、そのまま動けなくなってしまった。
――あっ!
ふわりと、和泉が微笑んだ。
吐息を間近に感じる。
思わず、ぎゅっと目を閉じた。
「んっ」
唇に何かが触れた。
それは甘くて柔らかくて……
――え?
開いたまぶたの向こう。
至近距離に和泉の顔があった。
わたしの唇に触れている和泉の唇。
それは、いつもよりも甘くて溶けてしまいそうだった。
「……甘いね」
ゆっくりと離れていった和泉が、甘い声で囁く。
何も言えないままのわたし。
「もう一度やる?」
和泉の指が、細長い菓子をつまむ。
わたしは……
熱に浮かされたように、ぽーっとなったままで頷いた。
「それじゃ。彩雪……あーん」
言われるまま口を開けば、唇に触れる菓子。
その甘さは、このあとにまた訪れるだろう甘い口づけを予感させる。
「じっとしててね」
頷いて、わたしは近づいてくる和泉をじっと待った。
END