騎士と神官・第0話 決戦前夜<ゼロスサイド>【スレイヤーズ/ルナゼロ】 2006年12月07日 スレイヤーズ/騎士と神官 0 騎士と神官シリーズ第0話 決戦前夜<ゼロスサイド> 「お呼びですか?」 声がして、『彼女』の前の虚空に黒い神官姿の男が現れた。 ばさり…… 翼が羽ばたき、虚空に浮かんだ『彼女』のまわりを羽が舞う。 『彼女』は、その虚空に腰を掛けるかのように足を組んだ。 「ゼロス。今から行って欲しい場所があるんだけど。」 言葉は柔らかいが、その口調にはどこか相手に有無を言わせぬものを含んでいる。 「また、どこかの『写本』を?」 開いているのか閉じているのか……どちらかよく分からない目を『彼女』に向け、ゼロスと呼ばれた男が問う。 その問いかけに、無言のままで首を振る『彼女』。 予想と違った応えに、ゼロスは首を傾げた。 そのゼロスの反応に、小さく笑みを浮かべながら『彼女』は再び翼をはためかせた。 ふわり、と地面に降り立ち右手である方向を指し示す。 幾重にもなった金属製のブレスレットが、しゃらり……と音を響かせた。 「ゼフィーリアへ」 しごく簡単に、行先だけを告げる。 「……いや、あの……いきなり格好つけられましても……」 困ったように頭をかきながら、ゼロスが言う。 「…………」 指を指したポーズのままで、『彼女』は沈黙した。 「……もぅ……いいじゃない、別に。」 腰に手をあてて、『彼女』はつまらなそうに唇を尖らせた。 「そーゆー気分の時だってあるんだから。」 くるりと踵をかえし、豪奢なつくりの椅子に腰掛ける。 それを目で追いながら、ゼロスは口を開いた。 「それで、僕をお呼びになった訳というのは……」 「あぁ、それそれ。」 ぽん、と手を打ち、『彼女』はそのまま腕を組んだ。 「さっきも言ったけれど、ゼフィーリアへ行って欲しいのよ。」 足を組みながら言う。 「なぜ?」 問い返すゼロスに、 「――『赤の竜神の騎士』を知ってるわね。」 意味ありげな視線を向けて言う。 「ええ。まあ……」 それが?という問いかけを含んだ応え。 「その赤の竜神の騎士が、ゼフィーリアに居ることが分かってね。 最近、あんまり羽振りがよいとは言えない私達魔族にとって、少なくとも『敵』と認識できる『人間』であることには違いないから……」 言ってため息をつく『彼女』。 「それで……そこへ乗り込んで、僕にどうしろとおっしゃるんですか? ――まさか…殺してこいとか、おっしゃるわけではないですよね……」 「できれば、そうして欲しいとこだけど…… 残念ながら、覇王と海王と話し合った結果、今回は調査のみってことになったら。 ほら、さっきも言ったけど…最近は私たち高位魔族も羽振りが悪いことだし。 ――まあ、できそうなら殺してきてもいいけどね。」 言って、小さく笑みを浮かべる。 「分かりました。 ……けど、調査って……興信所のヒトですか?僕……」 苦笑を浮かべるゼロスに、 「よく分かってるじゃない。」 微笑みながら、彼女は言った。 〈第0話ルナサイド|目次|第1話①〉 PR