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よみぢのほだし 小説の部屋

火弟巳生が書いた版権二次創作小説の置き場

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騎士と神官・第1話 邂逅<1>【スレイヤーズ/ルナゼロ】

騎士と神官シリーズ第1話
邂逅<1>



「ここが、ゼフィーリアですか……」

 黒髪に黒服の神官風の男が呟く。

 

 ゼフィーリアの王都ゼフィール・シティへと続く、街道沿いの森。

 そこの高い木のてっぺんで、ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべながら、その神官は器用に佇んでいた。

 

「……何だってこの僕が、「『赤の竜神の騎士』の素行調査」なんて事をしなきゃなんないんでしょうねぇ……」

 困ったような口調でそう呟き頭を掻く。

 けれど、その顔には笑みが浮かんだままであった。

 

「まぁ、取り敢えず行ってみましょうか。」

 いまいちやる気のなさそーにそう呟くと、黒い神官はさっ、と身を翻して虚空へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

                                  1

 

 

 

 

 昼を少し回った頃。ようやく、リアランサーに平穏が訪れた。

 今店にいる客は、少し遅い昼食をとる人か、暇な時間をつぶしに来た近所の若者くらいなものである。

 ルナは、他のウェイトレスたちと一緒に遅い昼食をとっていた。

 

「どーしたのよ?ルナ。

 今朝からえらくぼーっとしてるみたいだけど。」

 

 隣に座るショートカットの女性の問いかけに、ルナは、

「え?

 ……ああ、別になんでもないわよ。」

 小さく微笑みながら答えた。

 

「まあ、ルナのことだから、男のこと考えてるとか、リナちゃんのこと心配してる。

 ――なんて事ないでしょーけど」

 誰かが言ったそのセリフに、全員が同時に頷いた。

 

「こらっ!そこっ!しみじみ頷かないっ!」

 思わず立ち上がって、ルナは、今頷いた全員につっこみを入れた。

 

「だって……」

「ねえ……」

 顔を見合わせ、皆が言う。

 

 

 ――まったく……

 

 心の中でルナはぼやいた。

 

 ――こんなじゃ、考え事もできないじゃないのよ……

 

 立ち上がり、食べ終えた食器を片付ける。

 他のウェイトレス達も食べ終えたのか、めいめい、片付けを始めている。

 もうしばらくすれば、昼下がりを過ごす人達がやってくるだろう。

 ゆっくりとはしていられないのだ。

 

 ――それにしても……

 

 ルナは思う。

 昨夜から感じている気配。

 ……それが、ルナが考え事をしている理由である。

 

 ――あれは……恐らく瘴気。

 

 それも、かなり強い瘴気。

 ということは……

 

 ――魔族が近くに来てる?

 

 ……だったら……

 ぐっ、と拳を握る。

 

 ――返り討ちにしてあげようじゃないの

 

 ルナは不敵な微笑みを浮かべた。

 

 

 

                      *     *     *

 

 

「うーん。

 一体何処にいるんでしょうねぇ。お目当ての方は。」

 

 黒髪黒服の神官が、通りを行く。

「一体どんな方なんでしょうねぇ。」

 開いてるんだか閉じてるんだか分からないような目で、彼は辺りを見回す。

 

 彼の名はゼロス。

 自他共に認める『謎の神官』である。

 

「そもそも……話にしか聞いたことがないって言うのに……どうやって捜し出せと言うんでしょうかねぇ。」

 

 ――おや?

 

「意外と早く見つかりましたかね。」

 閉じていた目が開く。

 

 ……凍てつくような冷たく鋭い瞳が……一軒の建物を映していた。

 自らとは決して相容れぬ気配が、その中から微かに感じられた。

 

「……軽食でもとりつつ、調査を始めましょうか」

 呟きながら、ゼロスはその建物のドアを開け、中へ入って行った。

 この町一番と噂される食堂・リアランサーに……



第0話ゼロスサイドルナサイド目次第1話②



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